« DIC川村記念美術館「本好きのための美術案内」で紹介した書籍展示のお知らせ | メイン | 新商品「文庫本カード@&moon」12月1日発売のお知らせ »

「本好きのための美術案内」での書籍ご紹介 @ DIC川村記念美術館

151119_1.jpg

DIC川村記念美術館で開催中の「絵の住処ー作品が暮らす11の部屋」展に合わせて、
book pick orchestra川上洋平が本を選んで行ったギャラリートーク
「本好きのための美術案内」。
学芸員の方と一緒に11の展示室を回りながら、
作品や空間と本とのつながりについてお話ししました。

今回選んだ本は、絵画についての解説書や研究書などではなく、
絵画の背景や画家の作品との距離感など、
絵画のもつ印象がどこか共鳴している本を選びました。
本でも絵画でも、感動に心がふるえる瞬間は、思いもしなかったところで起こります。
本を選ぶことで、少しでも絵画の感動につながる橋かけられるよう
心がけ選ばせてもらいました。
この中のどれか1冊でも、みなさんの心に波紋を広げられる水滴になればうれしいです。


選んだ約50冊の本は、
その本と美術作品とのつながり、選書の視点に関するコメントとともに
現在、日本画展示室の奥にある茶室にて展示しています。
ぜひ絵画を見た後に、お茶を飲みながら手にとっていただけたら幸いです。

以下に、展示中の本の一部をご紹介します。


《101 ヨーロッパ近代絵画の部屋》

151119_2.jpg

『一色一生』志村ふくみ 求龍堂
 for クロード・モネ《睡蓮》
季節や時間によって移り変わるシヴェルニーの睡蓮池を連作で
表現した《睡蓮》。本作はそのうちの一枚です。この絵に選んだ
本の著者、志村ふくみさんは、色の背後にある植物の生命を色
を通して映し出すように、さまざまな植物の花、実、葉、幹、
根から色を染めてきました。染織家としての体験の中での深い
思索を細やかに語る随筆には、詩的な美しさを感じます。


151119_3.jpg

『タラチネ・ドリーム・マイン』雪舟えま パルコ
 for マルク・シャガール《ダヴィデ王の夢》
まさにシャガールの描く、理想の国。そこにはさまざまな対立
やナチスの迫害などの苦悩を経た上での、時空を超えた幸福感
が感じられます。雪舟えまさんの作品にも、現実感を手放さず
に未来へ向けて幸せを希求するような物語が詰まっています。
「ワンダーピロー」というお話は、この絵に明るく描かえた人びとを、
「モズ・ラファ」という話は中央の男女を描いた物語のようです。


《102 レンブラント・ファン・レインの部屋》

151119_4.jpg

『風貌』土門拳 講談社文庫
for レンブラント・ファン・レイン《広つば帽を被った男》
若き実業家のように見える、《広つば帽を被った男》への想像を
巡らせるための三冊目の本は、日本を代表する写真家、土門拳
が様々な分野の一流の人びとの一瞬の表情を写しとった『風貌』
です。彼は名文家としても知られ、すべての写真には一文が
添えられています。数々の風貌を見た後に、再び、絵の男に目を
移すと、少し違った表情や性格が見えてくるかもしれません。


《103 彫刻の部屋》

151119_5.jpg

『ヴィーナス・プラスX』シオドア・スタージョン 国書刊行会
for コンスタンティン・ブランクーシ 《眠れるミューズ II》
ブランクーシは「孤高の彫刻家」とも呼ばれますが、スタージョン
もまた孤高であり、独創性に満ちた思想の持ち主。『ヴィーナス・
プラスX』は、今なお新しく、性的なテーマを考えさせるSF小説です。
《眠れるミューズ II》の単純化された形態は、女神でありながら
男性のようにも見え、本書に登場する未来都市の人びとの姿を彷彿
とさせるとともに、二人の作家の本質を突き詰める姿勢にも共通性を
感じます。


《110 日本画の部屋》

151119_6.jpg

『愛猿記』子母澤寛 文藝春秋
for 橋本 関雪《秋桜老猿》
この絵を見て、はじめに感じたのは猿との距離の近さでした。
猿は凶暴なのでこんなに近づけないのではと思ったときに、
子母澤寛『愛猿記』を思い浮かべました。子母澤寛は歴史小説
を中心に活躍した作家ですが、ひょんなことから、誰もが手に
負えない猿を引き受けることになります。タイトル通り愛する
猿との日々、扉にはさまれた写真を見ていただければ、
猿との距離感を感じていただけると思います。


----------------------------
※「絵の住処ー作品が暮らす11の部屋」
http://kawamura-museum.dic.co.jp/exhibition/index.html

※DIC川村記念美術館
http://kawamura-museum.dic.co.jp/index.html

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.bookpickorchestra.com/cgi/mt/mt-tb.cgi/496