« 【レポート】『井のいち文庫』をつくろう! Sewing books at knulpAA | メイン | 【レポート】Fantastic Arcade Project「まち、ひと、ほん。」<後半> »

【レポート】Fantastic Arcade Project「まち、ひと、ほん。」<前半>

夏休みも終盤に近づき、小学生は宿題が気になりだす季節。
福岡県は、北九州の小倉にある魚町サンロードにて、
ワークショップとトークセッションをしてきました。
今年の1月、3月に続き、3回目となる今回は、
その名も「まち、ひと、ほん。」

2015年のアーケード撤去と街の生まれ変わりに向けて、
約30年間アーケードの下でつむがれてきた物語をアートの力で掘り起こし
「人と人とのつながりのアーケード」をかけ直す試みFantastic Arcade Project。
その一環として、「まち、ひと、ほん。」を巡るワークショップと、
トークセッションを行いました。

初日は金曜日、久々の魚町サンロードです。
半年弱ご無沙汰していただけでも新しいお店ができたりと、
街がさらに華やかになっていて驚きました。
そして、トーク会場はどこかなー、と聞いてみたら、
なんとアタゴ書店のとなりの久光家さんの前を使わせていただき、
サンロードの通りをはさんで開催するという、斬新な設定。

この手前がわたくしと1日目のゲスト、ブックスキューブリックの大井さんですね。
なんだか勝手に道端で話しているようですが、道の反対側に・・・

お客さんはいます!

道を歩く人が登壇者とお客さんに挟まれるという前代未聞の会場設計。
案内役としてはお客さんの顔が見えずかなりフワフワしましたが、
お客さんからは「舞台を見ているよう」と好評のようだったので一安心です。


さて、トークセッション1日目のお相手は、
福岡で面白い本屋さんといえば、真っ先に名前の上がる、
ブックスキューブリックの大井実さん。

私も各地でお名前を聞きすれ違いもしていたのですが、
ちゃんとお話するのは初めてでした。
どのような経緯でブックスキューブリックを開店するに至ったのか、
けやき通り店と箱崎店のそれぞれの特徴や大変だったことから、
BOOKUOKA(ブックオカ)の話、イタリアにいらしたときの体験、
そして奥様との出会いの際の本のプレゼントのことまで、
いろいろなお話を聞かせていただきました。

大井さんは、全国区で有名な本のイベントブックオカを立ち上げ、
実行委員長もされています。
お話の中で特に印象に残ったのは、以前のブックオカでのイベントにて、
角田光代さんをお呼びした際に、その場で150冊ほどの本を販売したというお話。
150冊!という数がまずすごいんですが、実は会の盛り上がりのために、
事前にたくさんの仕掛けをしていたことを話をしてくれました。
大井さんはもともとイベントを企画・運営する会社で働かれていたこともあって、
その仕掛けの巧みさや独自性は、本屋さんというよりも、
イベントのプロの仕事を感じさせるものでした。

「ユニークで楽しそうな活動の一方で、運営面や企画の計画性といった実務的な部分をしっかりやる両方のバランスがとても重要。」

「お店もイベントもこれこそがやりたいんだ!という強い気持ちを持つことが大事、その気持ちは本や体験を通してわかってしまう。」

ということを実際の試みとともに熱くお話いただくその様子から、
ブックスキューブリックさんが福岡のみなさんを魅了している、
その理由の一端が垣間見えたような気がしました。

そういえば、我々の話している後ろの窓格子の中に座っている人々、気になりますね。
窓格子の向こうのみなさんの偉大さは最後に説明します。


さて、次の日、2日目の土曜日には、
午前中にSewing booksワークショップを行いました。

アタゴ書店の2Fで朝からこっそり始めたのですが、
始まったらみなさん大盛り上がりで、
タイムキーパーをしている私の声を無視して本の話を続けます。
本の話で盛り上がるのが大目的なので、主催者としては喜ばしい限りなのですが、
みんなあまりに熱くなっててふつうに無視されるので、私はまさに蚊帳の外。
傷心の中、進行します。

今回ものいつも通りたくさんのつながりができましたが、
深いところでつながったものが多く感心させられました。
中でも参加したみなさん納得の最後のつながり発表は、
イベントの趣旨ともあいまって鳥肌が立つようでした。
つながった本は、藻谷浩介さんの『里山資本主義』と
いせひでこさんの絵本『ルリユールおじさん』。

「ルリユール」は、フランス語で手製本の技術を指す言葉。
小さな女の子が自分の大事にしていた本がボロボロになってしまって、
どうにかできないかと街をめぐり、新しい本も何だか違うと迷うなか、
ついに「ルリユールおじさん」に出会って、自分の本を新しく、
製本しなおしてもらうというお話。
本を持ってきてくれた方は、ページ構成の妙を紹介しながら、
「「ルリユール」には「もう一度つなげる」という意味もあるんです」
と説明してくれました。
一方、『里山資本主義』は、新しい経済について書かれた本。
里山のお金に還元できない大切な資本に注目して、豊かな生活を考えなおそう、
という今話題の一冊。2冊のつながりキーワードは、「再生」です。
その理由は、古書や里山のような昔からあるもの中には、他にない価値がある。
その価値を見出して、新たな形で再生していくことが、
この2つの本にはそれぞれ別の形で描かれている、ということでした。

そこでみんながピンッと来たのは、まさに今回のFantastic Arcade Projectも、
魚町サンロードの約30年間の過去の物語を掘り起こし、
これからのアーケードという新たな形で新しく再生していこうという、
同じようなコンセプトの元に始まっているということ。
偶然にしては美しすぎる流れに、
終わった後もしばらくみなさん興奮冷めやらぬ感じでした。

さて、次は3夜連続トークセッションの2日目ですが、
ちょっと長くなってきたので、ここらへんで<前半>終了です。

後半へ続きます。

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.bookpickorchestra.com/cgi/mt/mt-tb.cgi/456