2006/06/07

『中国製造』島尾伸三・潮田登久子



変な置物を探そうと思ってみれば、意外といろんなところにあるものです。ふと入ったラーメン屋に飾られたばかでかい皿、目の前を通り過ぎていった車のリアウィンドウ越しに傾く微妙な表情のぬいぐるみ、はたまた、小さい頃に遊びにいった友達の家の玄関にありながら、なぜあるのか意図がわからない不気味な人形。これらのものは私たちの生活での間隙を埋めつつも、しかし一対一で対峙することは滅多にないシロモノです。何かおかしい、デザインが良くない、、、どころでなく絶対にくれると言われてもいらないものから、何処か惹かれてしまう、、、そもそもあれは何なんだろう?と悩まされながらも、わざわざ聞くほどでもないと済ませてしまうもの。そもそも置物というものは、どこかの遠い世界で見初められはるばる連れて来られたのだから、変わって見えるに決まっているのですが、だからこそ立ち止まって考えてみればとても豊かな世界がそこには広がっています。

島尾さんと潮田さん夫婦は、そんな世界の住人たちを丁寧に一人ずつ集めてきたのです。しかも島尾さんが集めてきたのは、特にその生態が怪しいと思われ、また一方で濃密な魅力を振りまいている、その世界の極北とさえ行っても過言ではない中華世界の住人たちなのです。

本書は、『中華図案見学』や『香港市民生活見聞』などでも地道に集めていた「玩具、茶器、食器、人形、ままごと」などのモノを一挙に写真で紹介。水戸芸術館での展覧会「まほちゃんち」で展示され、それを念頭に置いていたこともあるだろうが、ささやかなインデックスとタイトル以外、一つ一つのモノの写真が載っているだけである。しかし、だからこそ存在感が浮き出ていて、解釈不可能な言葉であるがモノが不気味に語りかけてくる(ような気になる)。

中から、お気に入りをいくつか。


題して、「お風呂大好き」。体は子供のくせにどこかませた表情と、ネックレス。態度もまさしく大将肌で、その柔らかな肌を隠そうともしていません。1980年代以前の玩具。


「ハーモニカ」。タツノオトシゴの形をしたハーモニカのようです。写真右側に口があるようですが、置物なのか、楽器なのか中途半端さ加減がらしいです。これも1980年代以前の玩具。


「両端に顔がついている双頭の薬まくら」。。。ま、まくら!これは寝れません。顔が怖すぎます。薬まくらは体にいいようですが、このビジュアルでは夢に出てきそうです。かなりのコアな人が愛用していたのでしょう。1980年代以前の実用品。

中のキャプションにならって、一言つけましたが、もう上の写真を見てもらえば言葉は必要ありません、モノたちがあまりに豊富に語ってくれていますから。本書は新刊でも発売されていますが、状態は全くの新刊なので、少しお安くして1400円くらいでしょう。

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