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2007年11月 アーカイブ

2007年11月04日

だれも知らない小さな国

気づいてみれば、前回のエントリがなんと9月でした。
わわ!
猛省して長めに更新いたします、よろしければお付き合いください

きょうは中学高校あわせて6年間通った、母校の学園祭だったのであります
母校は世田谷・経堂にあります。
二十歳になったのに乳臭いわたしはついつい遊びに行ってしまいました。
何と言っても懐かしいのは通学路。

中学生だけが通ることになっていた住宅街の道は、入り組んでいて幾つも抜け方があり、その日の気分によって選ぶことのできる、散歩好きにはたまらない造りでした。

人気者の猫がいつも昼寝していた室外機、魔女が住んでるみたいな洋館、おばちゃんがポインセチアをくれて「またあげるからおいで」と言ってくれたけれど何故か気まずくなって以来通るのを止めてしまった一本道、きれいな紅いろの百日紅、物知りの友だちが教えてくれて初めて桐だと知った独活の大木みたいな木、屋上から下のわたしたちにワンワン吠えていたゴールデンレトリーバー、ドナルドダックの偽者がほほえむ看板のクリーニング屋さん。

高校生だけが通るのを許されていた商店街。

通りすがるたびいいにおいのする豆腐屋さん。冬になると鯛焼きが並ぶ和菓子屋さん。合唱コンクールや卒業式のたんびに、指揮者や恩師に手渡すための花束を生徒が発注する花屋さん。予約すればケチャダンス実演がみられるというカレー屋さん。行列のできるラーメン屋さん。

商店街にはお洒落なお店がたくさん増えていてびっくりしました。
そういえば、bookpickorchestraもお世話になったことのあるROBAROBAcafeさん
http://www15.ocn.ne.jp/~robaroba/
も、この商店街の端っこにあるのです。

また、かの植草甚一氏も愛したという古本屋さん・遠藤書店さん
http://koshoendou.exblog.jp/
も、この商店街のもう一つのほうの端っこにあるのです。

さてさて前置きが長くなりましたが、
きょうわたしは遠藤書店さんで「星からおちた小さな人」「ふしぎな目をした男の子」「小さな国のつづきの話」の講談社文庫版を、それぞれ105円でゲットしました。
daremo1

これらは、かの名作、「だれも知らない小さな国」の続編たちです。
「だれも知らない小さな国」というのは、コロボックル物語集の第1作目でして、コロボックル物語集は全5巻を以って成ります。
わたしは既に「だれも知らない小さな国」と「豆つぶほどの小さないぬ」の2作を持っていたので、きょう遠藤書店で購入した3冊を合わせて、コロボックル物語全5巻の全てを手に入れたことになります。
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書かれたのは佐藤さとるさんです。
余談ですが、この写真の「だれも知らない小さな国」の作者は「佐藤暁」となっています。画家の方も、コロボックル物語の挿絵といえば村上勉さんなのですが、こっちでは若菜珪さんです。古い版なのでしょうね。レアなのでしょうか、得した気分です。

ちなみにわたしは、上に書いた3冊の他に、同じく佐藤さとるさんの書かれた「赤んぼ大将」という講談社文庫と、佐藤さとるさんの談話が載っている「作家が語るわたしの児童文学15人」という本も買いました。
早い話が大漁だったわけです!
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「作家が語るわたしの児童文学15人」というのは日本児童文学者協会というところが編集していまして、松谷みよ子さん・あまんきみこさん・那須正幹さん・舟崎克彦さん・岡田淳さん・末吉暁子さん・古田足日さん などの錚錚たるメンバーが名を連ねています。
ここぞとばかりに自慢するわけですが、へへん、いいだろー!!

ところで以前bookpickorchestraには「ファンタジーの世界」という佐藤さとるさんの書いた講談社現代新書があったのですが、
川上さんにお願いして、わたし、買っちゃいました!
今は中身を割愛しますが、ユーモラスにかつ真摯に「児童文学におけるファンタジー」を解説した良書です。
川上さんによりますと、今ではなかなか手に入らない本らしいです。
いいだろー!

おっと、枕が長くなってしまいました。
きょうは小人のはなしをするつもりだったのです。

この地球に住む人間を二分するには色んな方法があります。
コーヒー派・紅茶派
蕎麦派・うどん派
日々の泡派・うたかたの日々派
翻訳小説派・国内小説派
便箋派・葉書派
犬派・猫派
晴れ派・雨派(ときたま曇り派)

わたしはそこに一石を投じたい!
この地球の人間を二分する方法としては『目の隅を何かが横切ったら小人が通ったんだと思ってわくわくする派・そうでもない派』が最適だと思うのです!!

そして『目の隅を何かが横切ったら小人が通ったんだと思ってわくわくする派』は更に
『それはコロボックルである派』と『それは借り暮らしの人である派』に分けることができるのですが、その話は今は置いときましょ。

そう!コロボックルとは小人のことです。
アイヌの伝承に登場するもので、コロボックルは「蕗の葉の下の人たち」という意味だそうです。
佐藤さとるさんによれば、彼らはあまがえるの皮をかぶって人の目をあざむき、人間より十倍も早口なのでゆっくり喋らないと何でも『ルルルル』としか聞こえません。
ヒイラギノヒコだとか、モチノキノヒコだとか、身近な自然にのっとった名前を持ちます。
ご先祖さまは、古事記や日本書紀でおなじみのスクナヒコノカミ。あの小さな賢い神様で、オオクニヌシノミコトの仕事を助けたというひとですね。色んな神社で祀られています。

佐藤さとるさんは、アイヌ伝説に登場する小人であるコロボックルを、みごとに生き生きと描き、わたしたちの身近に引き寄せてくれたのです。わたしたちの目に見えない小さなところで夢のようなできごとが繰り広げられているのでは、とのわくわくを教えてくれたのです。
経堂のあの蜘蛛の巣みたいな通学路を、もしもいつもと違う方向に曲がったら、奇想天外おかしな世界に紛れこんでしまうかもしれない。そんなわくわく。
小人の話を書いた人だけれど業績はでっかいのです

「だれも知らない小さな国」のすごいところは、リアリティがあるところです。
もう三十歳くらいの大人である主人公が子供時代を回想するところから話しは始まります。
主人公が子供時代に毎日遊んでいた裏山は、鬼門山という名前で、一寸法師くらいの魔物が住むという昔話が伝わっていた。
ある日主人公は、川に浮かぶ靴のなかに小指ほどしかない小さな人が二、三人乗って、こちらに向かってかわいい手をふっているのを見てしまいます。
なんだい、ありゃあ?
あれがこぼしさまだ!

主人公は、不思議のひそむ裏山をいつかじぶんのものにしたいと考えます
そして美しい山で毎日遊ぶのですが、
別の町へ引っ越してしまい、少しづつこぼしさまのことを忘れていきます。

そして戦争が始まり、終わりを迎えます。
何にも無い焼け野原をながめ主人公はぼんやり思うのです。
そうだ、あの山へ帰ろうと。

ここからは現在の話しです。
読者は、主人公と共に動き考え、裏山にひそむ謎を解明していくのです!

そして山を開拓するのですが、その様子がまた面白い。
一連の漂流モノや冒険モノに共通する、人間ひとりの力で自然を相手にする、あの気持ちよくお腹の空く感じが味わえます。
そしてまた恋も絡むのです!なんて良い本なんでしょうか。

結末まで書くのは野暮だろうのでこのへんで止めておきます。ぜひご一読ください。
シリーズの続編もほんとうのほんとうに面白いですよ!

ところでコロボックルは、この現代社会で生き抜くため、コロボックルの秘密を知り協力してくれる人間の仲間を必要としています。
しかしコロボックルを見世物にしたり実験台にするような人がいないとも限りません。
だから、コロボックルは人間を試します。
コレハと思う人間をみつけたら、まずは姿を隠し、その人間を監視します。そして良いと思ったら姿を現すのです。コロボックルの動きはとても素早いので、人間の肉眼には黒い小虫がさっと目の端を横切ったくらいにしか映りません。

わたしは
『目の隅を何かが横切ったら小人が通ったんだと思ってわくわくする派』
かつ
『それはコロボックルである派』
です。

だからわたしは、目の端を黒い何かが横切ったときは、もしやコロボックルかと
「わたしはあなたたちの味方です」
とそっと口にすることにしています。
そしたらコロボックルが姿を現してくれるかもしれないからです。


実は、まだその望みを捨てていません。

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