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第8回:「鬼」
「鬼は〜そと!」と、すべての鬼に豆を打ち付けるのは、少しばかり大人げない。
世の中にはいろんな鬼がいるんです。
節分に豆を投げるその前に、鬼を知るための本、ご紹介します。

野垂れ死に

『野垂れ死に』
藤沢 秀行
新潮新書

<鬼の金棒妻> 選:功刀店員
天才とも無頼派とも呼ばれる著者の半生記です。棋士として成功する一方で、私生活はケタ違いに破天荒。早く野垂れ死にたいと思いつつもがんを3度克服し、ついに死に神もしっぽを巻く。そんな著者の”強さ”の秘密は、著者に劣らぬパワーを持つ奥様。碁の鬼にふさわしい最強の金棒です。奥様への感謝の気持ちをつづった最終章は心温まります。

ないたあかおに

『ないたあかおに』
浜田 廣介(著)
池田 龍雄(イラスト)
偕成社

<鬼であることのカナシミ> 選:ボンヌ店員
日本のアンデルセンの異名をとる童話作家によって描かれた、人間と仲良くなりたい赤鬼をめぐるせつなくも悲しい物語。大人から子どもまで、社会になじめないせつなさや友情についてしんみり考させられます。「異形のもの」という意味を持つ”鬼”は、ある意味で世間におけるアウトサイダーなのかもしれません。読む際にはハンカチ必携です。

芥川龍之介 [ちくま日本文学002]

『芥川龍之介 ちくま日本文学002』
芥川 龍之介
ちくま文庫

<浅ましく、愚か。それが「鬼」> 選:松尾店員
芥川の作品には非常によく鬼が姿を現します。特におすすめしたいのが、「薮の中」。ある死体をめぐる、主な登場人物の告白・懺悔・証言から、物語が構成されています。ひとつの死体に、真実はひとつしかありません。しかし誰しも「自分が殺した」と言うのです。隣で笑っている人間、そして自分さえも鬼になる。油断大敵。笑って豆など投げれません。

おたくの本懐—「集める」ことの叡智と冒険

『おたくの本懐—「集める」ことの叡智と冒険』
長山 靖生
ちくま文庫

<収集癖にとらわれた人々> 選:川上店員
本書で「おたく」とは、「収集癖をもつ人」を意味する。自身も収集家である著者は、先達たちの生き方と方法論を追い、収集の意義を探る。「収」は「蒐」とも表記するように、彼らの執着は鬼のようでさえある。収集のためには一日の食を削り、女性には目もくれない。けれど本書を読むと、一途な彼らの人生が羨ましいほど魅力的に思えてくるのだ。

ここち 8号

ここち 8号 1月26日発行
にて掲載されました。

毎日新聞ホームページにて内容を閲覧できます。

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