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第6回:「ゆれる」
ぐらぐら、ふらふら、おろおろ、がたがた
「ゆれる」といっても実にさまざま!
まずはちょっと、ゆれたら最後、もう止まりません。

燐寸文学全集

『燐寸文学全集』
安野 光雅、池内 紀(編)
筑摩書房

<ゆれうごく燐寸の魅力> 選:川上店員
「マッチ売りの少女」の主人公は、マッチに火をともして幸せな夢を見る。この話は子供のころにじっと見つめたゆれ動く炎の魅力を、ありありと思い出させます。マッチは、魅力的な光を生む魔法のオブジェ。本書は古今東西の文学作品から、マッチが登場する名場面を集めた奇特な一冊。暗闇の中、マッチの明かりのみで読むことをおすすめします。

ガープの世界

『ガープの世界』
ジョン・アーヴィング(著)
筒井 正明(訳)
新潮文庫

<ゆれることのあやしい驚怖> 選:松尾店員
ガープは走る。恋の死、作家の死、人生の死。あらゆる死に捕まらないよう、ガープは走る。振り向かない。どんなに惑わされようが、ガープは走るしかない。待ってよ!と誰かが言う。彼らはガープを止めようと地震を起こす。その揺れにガープだけではなく、私たち読者でさえも揺さぶられ、それがガープの世界から、この現実の世界へと響きはじめる。

とげ抜き新巣鴨地蔵縁起

『とげ抜き新巣鴨地蔵縁起』
伊藤 比呂美
新潮社

<ゆれ動く存在、それはオンナ> 選:ボンヌ店員
オンナにはいろいろある。娘らは育ち、両親と夫は老いていく。母で、娘で、妻で、詩人である筆者もまた。人生の坂を下り始めたオンナの日常は結構つらい。だからオンナは巣鴨へ行く。「毒」を抜いてもらうため。祈りや念仏にも似た語り口で、オンナの日常が書きつづられた本書には、どんなにゆれてもそれでも生きていくオンナの力強さを感じます。

俺はその夜多くのことを学んだ

『俺はその夜多くのことを学んだ』
三谷 幸喜
幻冬舎文庫

<ゆれる男心を耳で楽しむ> 選:功刀店員
恋にゆれる男の、切なく、どこかこっけいな姿を描いた劇作家・三谷幸喜さんの短編小説です。思いを寄せる彼女への電話ではじまる長い夜。主人公の、静かな、時に熱いモノローグは、声に出して読んでみるとなんともリアルです。そこで提案。ぜひ「読み聞かせ」で楽しんでください。読み手も聞き手も、ひと味違った「ゆれ」を感じることができます。

ここち 6号

ここち 6号 11月24日発行
にて掲載されました。

毎日新聞ホームページにて内容を閲覧できます。

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