こちらは新しいページに移行しましたので、トップページから新しいページをご連絡ださい。
book pick orchestraのトップページ

第5回:「よくばり」
「よくばり」で頭に浮かぶものは食べ物ばかり。
食べ過ぎは体によくありませんが、読み過ぎならばモウマンタイ!今回は「よくばり」なあなたも満足できるよくばり本をご紹介します。

せかい いち おおきな うち

『せかい いち おおきな うち』
レオ・レオニ(著)
谷川 俊太郎(訳)
好学社

<よくばりなかたつむりのお話> 選:平尾店員
おおきなうちがほしい、というちびかたつむりに、お父さんかたつむりがお話を聞かせてくれました。おおきくてきれいでりっぱなうちをもった、あるかたつむりのお話です。レオ・レオニの柔らかでユーモラスな画と谷川俊太郎のうたうような訳。目の前の出来事で余裕をなくしがちな時、本当に大事なことを見失わないために。心にそっと染み入る一冊。

貧乏サヴァラン

『貧乏サヴァラン』
森 茉莉
ちくま文庫

<よくばりだから素晴らしい> 選:平尾店員
著者の全集から、「食」についての短編を集めた文庫オリジナル。事細かに、食べ物の色や香りや味の描写がなされるため、まるで自分の目の前に料理が運ばれてきて、一緒に味わっているような気分になれる。想像力を駆使することで、食卓はニューヨークにもパリにも江戸や京都にもなる。本当のよくばりとは、たぶんこの人のことをいうに違いない。

フェルマーの最終定理

『フェルマーの最終定理』
サイモン・シン(著)
青木 薫(訳)
新潮社

<うっとりするような数学という夢> 選:松尾店員
子どもの頃、教科書で見かけたフェルマーの最終定理。文系の者からしてみれば、永遠の憧れかと思える理系の世界。そこへいとも簡単に引き込んでくれるサイモン・シンのやさしい語り。世界一手強い数学の問題の歴史を、そばで見ることができる。読み進めるうちに、ああ私も戦いたかった、証明してやりたかったと思わせるほどに、とっても楽しめる一冊。

苦味を少々−399のアフォリズム

『苦味を少々−399のアフォリズム』
田辺 聖子
集英社文庫

<手元に置きたい、よくばりな一冊> 選:平尾店員
田辺聖子の恋愛小説は面白い。それは著者とっておきのアフォリズムが、作品中に散りばめられているからだ、と思う。数多くの田辺作品の中から、テーマに沿って選び抜かれた399のアフォリズム。本書を読んでから、各作品に手を伸ばすのも楽しい。ちなみに私は、枕元に置いて、寝つけない時などに手にとって、つまみ読みをすることにしている。

ガブガブの本

『ガブガブの本』
ヒュー・ロフティング(著)
南條 竹則(訳)
国書刊行会

<ブタが食を語り尽くす> 選:楢山店員
ガブガブは英国で生まれ世界に愛される「ドリトル先生シリーズ」の登場人物ですが、正確に言えば人間ではなく、ブタです。食の権威であるガブガブが奇想天外な"食べ物語"をおなじみのドリトル一家に語ります。例えば冷蔵庫探偵のミステリ、ピクニック王叙事詩など。ブタ君のぜいたくな食道楽に呆れつつ、あなたもこの本を味わってみませんか?

妖説太閤記

『妖説太閤記』
山田 風太郎
講談社文庫

<手に入れることへの猛烈な執念> 選:功刀店員
「鳴かせてみせよう」の努力家・秀吉の真の姿は己の欲望を満たすことへの執念の塊だったという異色の太閤記。秀吉の逸話の多い生涯が、歴史書からの引用、通説を織り交ぜながら、作者の奇想天外、絢爛豪華な演出で描かれています。主人公でありながら読者に早く死んでほしいと思わせるほどの壮絶な末期まで、凄まじい力で読者をひきつける一冊。

舞踏会へ向かう三人の農夫

『舞踏会へ向かう三人の農夫』
リチャード・パワーズ(著)
柴田 元幸(訳)
みすず書房

<歴史を語る欲望> 選:川上店員
一枚の写真をきっかけに複数の時間が始まり、緻密で丹念な言葉の積み重ねによって歴史が語られるように物語が紡ぎ出される。理解し明らかになるほどに歪みを増していく対象、彩られ煌めくほどに遠ざけたくなる目的、絶望が見えた刹那に輝きだす希望。読後、あなたは著者、自分自身、そして人間の存在に向かってこう呟くだろう。「よくばり」と。

ここち 5号

ここち 5号 10月27日発行
にて掲載されました。

毎日新聞ホームページにて内容を閲覧できます。

選書のお問合せ
企画のお問合せ