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第3回:「恋に恋して」
今回の号が出た頃は、夏まっさかり。夏と言えば、海、白い砂浜、青い空、そして、恋!
実際に恋をするのもいいですが、準備運動として、まずは恋に恋をしてからというのはどうでしょうか。いいなぁ、とつぶやいてしまうような、恋を読んでみてください。

絵草紙 源氏物語

『絵草紙 源氏物語』
田辺聖子(文)
岡田 嘉夫(絵)
角川文庫

<千年匂いたつ恋物語をカラフルに> 選:鬼島店員
古典の現代語訳も数多く手がけている作家と、歴史ものの挿し絵などで活躍する画家による、目にも艶やかな「源氏物語」。抑えめの表現で淡々とつづる文章と、髪の毛一本からも香りが立ち上がってくるような挿画の組み合わせが妙。平安貴族たちの心のひだと繊細な都の情景のなかに、するすると入り込んでしまいます。平野甲賀による装丁も端正です。

あしたはうんと遠くへいこう

『あしたはうんと遠くへいこう』
角田 光代
マガジンハウス

<恋する乙女は爆走する> 選:ボンヌ店員
ある女性の17歳から32歳までの恋愛遍歴が描かれたこの小説。主人公は道なき道をつっ走る猪の如く恋に突進しては倒れ、また次と走り出します。人を好きになり、好きになられることの甘さと浮かれ具合としんどさとスピード感と墜落感。程度の差はあれ、甘酸っぱかったり苦かったりする自らの恋愛体験を思い返しつつ読んでしまうこと必至です。

タムくんとイープン

『タムくんとイープン』
ウィスット・ポンニミット
新潮社

<「すきです、タムくん」> 選:松尾店員
タイの男の子が日本にすごく恋しちゃって、でも実際来てみたら憧れとはびっくりするくらい違っていて、それでもやっぱり好きだという素晴らしすぎる漫画です。とっても優しい気持ちになるし、ドキッとする。好きな人にプレゼントしたくなる本です。私たちがいま住んでいる日本のことがとてもまっすぐに描かれています。日本中の人に読んでほしい。

トムは真夜中の庭で

『トムは真夜中の庭で』
フィリパ・ピアス(著)
高杉 一郎(訳)
岩波書店

<ずっと一緒に遊んでいたい> 選:平尾店員
夏休み、親戚に預られたトムは、広間の古い大時計が13回鐘を打つのを聴きます。裏口のドアを開けるとそこには見たこともない美しい庭園が広がっていました。庭園で出会った少女と、毎晩楽しく過ごすトムは、ずっと遊んでいられるように、ある計画を思いつきます…。大人にこそ読んでほしい。好きになるって、きっとこんな感じなんです。

手紙、栞を添えて

『手紙、栞を添えて』
辻 邦生 (著)、水村 美苗 (著)
朝日新聞社

<せつない恋に立ち会う> 選:功刀店員
新聞紙上での往復書簡という形をとった書評連載です。ブックガイドとしても魅力的ですが、最後まで直接会うことのない二人の書き手が、次第に相手への敬愛を深めていく過程の記録でもあります。それは恋愛小説を読むこととも違う、まるで恋に立ち会っているかのような感覚です。美しい言葉で綴られた、相手への文学への思いにせつなくなります。

ここち 3号

ここち 3号 8月25日発行
にて掲載されました。

毎日新聞ホームページにて内容を閲覧できます。

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