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第2回:「ひんやり」
今回の号は7月末発売、そろそろ暑くなってくる季節ということでテーマは「ひんやり」。さまざまな「ひんやり」する体験をお送りします。クーラーが家にない方は、これを読んで涼しくお過ごしください。しかし読書とあなどっていると、クーラー病以上にやられてしまうので、慎重にお楽しみください。

アイスクリームの国

『アイスクリームの国』
アントニイ・バージェス(著)
長田 弘(訳)
みすず書房

<冷んやりの魔法> 選:平尾店員
色とりどりで目にも楽しく、口に入れると冷んやり甘い。アイスクリームは魔法の食べ物。少年たちは飛行船に乗って、野性のアイスクリームの国へ出かけます。夢のような冒険の、とんでもない結末とは?『時計仕掛けのオレンジ』の作者が贈る、儚げながら味わい深い、まさにアイスクリームのような名作絵本です。

男どき女どき

『男どき女どき』
向田 邦子
新潮文庫

<怖さに冷んやり、でもしっくり。> 選:功刀店員
表題で連載された四つの短篇小説。ときに人が遭遇する、思わず冷や汗が出るめぐり合わせが描かれています。とくに最初の『鮒』が印象的です。平凡な男の日常にふと訪れた一匹の鮒。その意味がわかると「怖さ」に冷んやりしますが、その怖さの奥に見える男女の機微が、しっくりと落ち着いた読後感をもたらします。

夜の樹

『夜の樹』
トルーマン・カポーティ(著)
川本三郎(訳)
新潮文庫

<「あなたはだあれ?」の恐ろしさ> 選:松尾店員
当時の米文学界に「恐るべき子ども」として熱狂的に迎えられた、カポーティの短篇集。暗くて寒い大都会に住む孤独な主人公たちは、救いようのない奇妙で不可思議な幻想に怯え、取り憑かれていきます。自分が誰なのか分からなくなってしまう意識の不安定さ、不確かさ、その恐怖をシリアスに描いた悲しくて冷たい物語です。

冥途

『冥途』
内田百間「門構えに月」
金井田 英津子(装画)
パロル舎

<癖になるリアルな怪談> 選:川上店員
ふとしたことから不慣れなところにまぎれこみひどく気まずい。周りの人は白々しく、孤独と不安から奇妙な想像ばかりが浮かんでしまう。こんな背筋の冷んやりとする情景をありありと表情豊かに描き出した怪奇短編集。どこかに漂うおかしみが絶妙な演出。書影は版画の美しいパロル舎版ですが、より底本に近いちくま文庫版もおすすめです。

ここち 2号

ここち 2号 7月28日発行
にて掲載されました。

毎日新聞ホームページにて内容を閲覧できます。

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