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第10回:「心機一転」
出会い、別れ、引っ越し、転職。明るくて眩しい春!
新しく気分を変えるのにぴったりの季節がやってきました。
あなたにふさわしい「心機一転」がきっとあるはずです。
手がかりになりそうな本、探してみました。

変身

『変身』
フランツ・カフカ(著)
高橋 義孝(訳)
新潮文庫

<変身後の憂鬱> 選:松尾店員
自分は変わらないと思っていませんか?いえいえ、とんでもない。『変身』を読むと、そこに漂う絶えず悪夢を提供してくれる鬱陶しい現実に、見覚えがあるかもしれません。淡々と綴られる物語を通して、ある朝突然“虫”に変わってしまうことは、ありうることかもしれないと思えてきます。読後にはベッドに入ることさえ戸惑われる、そんな心機一転の恐怖をぜひ。

阿呆列車

『阿房列車』
内田百ケン
ちくま文庫

<阿呆な旅に出ませんか> 選:小林店員
私は内田百ケンのことを「百ケン先生」と呼んでいますが、それはこの本がきっかけです。目的のない鉄道旅行を阿呆列車と名づけ、借りたお金で一等車に乗り旅に出る百閒先生。おかしな理屈や奇妙な会話に煙にまかれつつも読み進めるうちに、いつしか先生に敬愛の情が沸いてくるから不思議です。心機一転したいなら、阿呆列車の旅をぜひご体験ください。

るきさん

『るきさん』
高野 文子
筑摩書房

<私もいつかこんな心機一転を> 選:功刀店員
主人公のるきさんは東京で一人暮らしをしている30代の女性です。医療事務の在宅ワークをしながら、華やかさには欠けるけどのんきで楽しそうな生活を続けているのかと思いきや、突然イタリアへ引っ越してしまいます、なぜ? あっけにとられる読者に対し本人は涼しい顔。るきさんに似ていると言われる私は、読むたびに「きっと私も」とわくわくします。

自己流園芸ベランダ派

『自己流園芸ベランダ派』
いとう せいこう
毎日新聞社

<気持ち新たに育てよう> 選:ボンヌ店員
都会の園芸家はベランダで植物と戯れる…。自称ベランダーである著者の園芸スタイルは不屈のボクサーのよう。植物を手に入れ、育て、枯らし、そしてまた育てる。枯らしてもへこたれない。むしろ枯らしてから次の鉢へ向かうのが俺の植物への愛だとでもうそぶく姿は超ポジティブ。諸行無常の精神で綴る園芸日記を肥料に勇気の芽を育ててみては?

ピアノ・サンド

『ピアノ・サンド』
平田 俊子
講談社

<ささやかな心機一転> 選:川上店員
友人から100年前のピアノを預からないかと相談されたことで、怠慢な日常にかすかな光が射し込む。ピアノのために家具を買い替えたり、クラシックのCDを買ったり、大きな変化ではないけれど、じわじわと生活を変えていく。急に変わってくれるほど人生は甘くない。でも、ささいな事が人生を変えている。平凡な日々がいとおしく感じられます。

私はそうは思わない

『私はそうは思わない』
佐野 洋子
ちくま文庫

<理想のおんな友達> 選:平尾店員
著者は、絵本作家であり人気エッセイストであると同時に、結婚離婚を経て、育児に介護に七転八倒してきました。借り物ではない彼女自身のことばだからこそ、「わたしはそうは思わない」と言い強く切るすがすがしさが、胸に響きます。容赦ない一言に、少しへこんでしまうかもしれませんが、ぽんと背中を押されて、心機一転できること間違いなしです。

minimal

『minimal』
谷川 俊太郎
思潮社

<沈黙の、その後。> 選:ボンヌ店員
日常の延長線上に詩がありすぎたからしばらく詩から遠ざかりたい時期があった、と語る詩人が見つけたのは、三行一連からなる短い詩の形。一度歩みを止めたからこ そ見えてきた、簡素な言葉の豊かさ。そこには深呼吸してから吐かれたため息のような深い静けさがあります。言葉の持つ余韻の響きを日英それぞれ二つの言語で味わ えるのもまた一興。

ここち 10号

ここち 10号 3月29日発行
にて掲載されました。

毎日新聞ホームページにて内容を閲覧できます。

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