長島有里枝(20050206sun)

先仕事でお会いするひとは社内外あわせて大体30代〜50代で、必然的に既婚の男性が多く、入社前はそんなオトナの男の人に会う機会はそうなかったので、いろいろと新鮮です。筆頭は、結婚指輪率が驚くくらい高いこと。男性のアクセサリーに少々の抵抗がある古い性質ゆえ結婚指輪はとても気になるアイテムで、初対面では必ずチェックしてしまうし、毎日会っているひとの指輪なら、道に落ちてても当てられる自信があります。結婚指輪はおもしろい。いい意味で。

その指輪は、誰かにとって特別である証です。バリバリ音を立てて仕事してたって、怒ったって、家に帰ればみんな誰かのカワイイひとなわけです。想像して、人間的な部分を垣間見たようで、ニヤリとします。去年のことになりますが、わたしは、長島有里枝の写真集"NOT SIX"によって、すべてのひとは誰かのカワイイひとであるという、このささやかかつ重たい事実を発見したのです。

それは年下の旦那さんを撮りためた写真をまとめたものなのだけど、身内との生活を暴露して撮る写真が好みでないので、某モデル夫妻の写真集と同様、通り過ぎようとしました。と、旦那さんがわたしの好きな顔をしてたから、一応立ち読みのはずが、ふざけてたり、眠ってたり、子供を抱いていたりする、なんともまぁ普通の風景のなにかがひっかかったのです、わたしのどこかに。他人の恋人なんてどうだっていいのに。

後日、根津の元銭湯ギャラリーSCAI THE BATHHOUSEとNADIFFでの展示を立て続けに観ました。NADIFFでは、写真集に載っていない、よりプライベートな写真が展示されていました(本にできないみたいなハダカとか)。写真集より少しくだけた、空気の濃い写真は、見に行った友人の興奮した反応からも、やっぱりユニバーサルな強度を持つようでした。

この写真のチカラは、男女の間の関係性とか距離が写りこんでいるところにあるのかもしれません。今時隠されたものってそうなくて、多分裸はそれ自体じゃエロくない。恋のいろはも知らぬ子供の印象ですが。肌の色も凹凸も大体みんな動物として似たよなもので、心を寄せる特別の相手だからとかシチュエーションとかでエロくなるんだと思います。長島有里枝の撮る写真には、それが不思議な切なさをもってにじみでているようです。誓ったけど永遠じゃない。別々の存在だけど分身みたいなときもある。観るひとは我が恋人へのそんな抜き差しならぬ気持ちを思い出し、共鳴するのかもしれません。言うなれば思い出し作用。友人の結婚式に出た女の子が、「あぁ恋人のシンゴ君に会いたい。」とため息つくような。そのため息のために、わたしはこのごく私的な紙の束が写真集として存在することを認めました。

写真展から1ヶ月以上経った今日ふと書いているのは、40代のイイオトコ系上司に飲みの席で言われた一言を思い出したから。「お前が会うどんな気持ち悪いオヤジだって、結婚してるって時点でひとりの女性から愛されてるってことだから、お前は負けてんだぜ。」(わたしは未婚です。)極端だけど否定し難いこの一言を、夜道を歩きながら思い出し、結婚の決め手ってなんだろうな、とありがちなハテナに襲われつつ、ソーロング、また今度ね、と疑問を夜空に投げ返したのでした。(山田)



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