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中村一義(100s) (20050205)
「選ベナイ山」に迷い込むことってありませんか?
わたしはビルの企画・建築を生業にしていますが、ここのところ名づけラッシュで、建物名2つ会社名2つをつけました。楽しそう?いいえ!誰も見ないような特殊な会社の名前ならまだしも、建物の名前は訪れる人が唱え目印にするし、その場所に50年は残ってしまうので、硬直。ヤマダさん若いんだからその感性でおもしろいのつけてよと言われても、50年後の自分の感性まで先回りして恥ずかしくないものなんてわかんなくて、真っ当で直球なものがいいと思ってしまう。世の中に数多ある単語の中から好きなのを選べばいいんだけど、「将来にわたって恥ずかしくない」以外に選ぶルールがつかめないのです。
巨大な本屋に行っても、読みたい本がわかんない。着たい服が、降りたい駅が、観たい映画が。飛びたいサイトが。見たい景色が、聞きたい言葉が。いま・ここの自分の気分や方向が不明なんじゃなくて、世界のモノの山の中から、しっくり分かり合えそうな特別な相手が浮き上がってこない。たまに降ってくるそんな弱ったタイミングには、24歳になっても慣れない。服や遊び場所や恋人なんかを選び終わった者の特権、選んだ先の楽しみを謳歌してるひとたちを横目にひとりパニック。「ロクでもないモノばかり作りやがって」と資本主義を恨んだりして。
今日はまさにその弱ったデイでした。ツタヤ半額なり、とスキップしていったのに、決めてたCDは物理的に存在していなかった。じゃーなんか買ってしまうかとタワーレコードに行ったけど、同じくそのCDは存在せず、ついに迷子羊になり、こんな音が聴きたい!という行き場のない気持ちを胸に、1階から普段行かないヒップホップの階までさまよって、4時間経ってしまった。あぁ、今日は例の弱った日だ。そこで助けてくれたのは、最後に試聴した中村一義バンド100sのファーストアルバム「OZ」。今日はアコースティックでちょっと夜めの、おしゃれじゃない濃い音、みたいなやつが聴きたいと思っていたのに。
中村一義のいちばんの特徴は、言葉のつよさではないでしょうか。ちゃんと聴いたのはソロのファーストくらいで、音楽誌もそう読まなくなったので、デビュー当時の天才現る的な評価以降はよく知らないけれど、イデアに恋しちゃってるみたいな独特な言葉は、例えばドラッグストアなんかで他のJ-popにまぎれて聴いても、はっと清冽に光ります。ファーストフードとか深夜のコンビニでも、下卑ずに鳴っている。デビュー当時、高校の音楽の授業でドキュメンタリーを見たのが初めだったのだけど、その印象はたとえれば、殺菌灯の白い光でした。「このひとは自分で全部の楽器を演奏します。ひきこもりで、奥さん以外とはほとんどコミュニケートしてないのです。」と先生が言っていて(ほんとだったのかしら)、ひととコミュニケートしてないのに小さい部屋の中から「みんな」「博愛」なんて変なの、言葉がつよすぎるって、ブリットポップとパンクスにしか興味のなかった高校生(わたし)にも、印象的でした。
しかも、そのイデアへの恋みたいなものが、現実になっているところがまたなんとも天才ぷりです。ひとりで宅録してた男がライブをし、ファンも仲間も集め、ついにはバンドで音楽をつくるようになった、というこの状況。映画化できそうなくらい、いいハナシです。まっすぐな天才に、物語が吸い寄せられているよう。ひとりで叫んでた彼の言葉の放つ光は、バンドのファーストアルバムで温かみを増しています。この独特の言葉は、ひとによっては巷のヒットソングと同様のキレイゴトに聞こえたり、短い強い単語の羅列にしか見えなかったりするのかな。わたしは、ときに太宰治が発するような、こんな直球で感情に切実な言葉遣いができるひとが、他にすぐには思い浮かびません。
買って、ディスクマンにいれて、冬空のしたいくつも駅を通り過ぎて歩いて帰りました。選べない数多のモノをかきわけて、埋もれてたわたしに場所を作ってくれたようで、ありがたかったのでした。特に「光は光」。最高です。(山田)
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