| 黒魔術の手帖(20041219sun)
どんなに温厚な人だって、一度くらいは心の中で「このやろうっ」、と人に対して悪態をつく経験はあります。そんなとき、魔法やら超能力がつかえたら、なんて思ってしまうのは、黒魔術への欲望が芽生える瞬間なのでしょう。人には、常識では理解できない力、特に他人に勝ることができる力に対するあこがれは少なからずがあるもので、あまたの物語が何よりもそんな欲望を裏付けています。
『黒魔術の手帖』では、言わずと知れた澁澤龍彦氏が、魔術に関する魅惑的な書物を紐解きながら、興味深い話をとくとくと聞かせてくれるのですが、読んでみると、さすがに悪魔とか呼ぶのは大変なんだね、とわからされます。とにかく魔術を使うのはめんどくさい。しかも、お医者さんでもキビシイくらいグロテスクな現場に立ち会わなくてはなりません。実際に、悪魔を呼び出す方法なども紹介されていますが、比較的簡単なものでさえ「一度も卵を産んだことのない一羽の黒い牝鶏を」二つに引き裂かなければならないのです。澁澤さんは「これは簡単だから、お望みの方はやってごらんになるとよろしい。」なんてぬかしてますが、養鶏所でも経営してない限りなかなか「簡単」ではないんでない?とツッコミを入れたくなります。
さっぱり試してみることはできないので、魔術の真偽を問うことは難しいですが、いきおいで「昨日、うちに悪魔呼んじゃってサー。」なんて初めに言ってしまった人が引っ込みがつかなくなって、誰もやろうとは思わないような悪魔を呼ぶ儀式を捻り出したんじゃ?とも思いますし、また一方で、儀式というハードルを越えてしまえば、実際に悪魔が出てくる出てこないに関わらず、精神的に盛り上がってきて、違う世界が見えてもおかしくないとも思います。まー、どちらにしろその結果としての世界観には興味をそそられるのですから、それで充分なのですが、ただ一つ「黒魔術の手帖」なんて書かれると妙に実践的な感じがして、電車で読んだりするのは世間体が気になります。思い切って、『たのしい黒魔術』とかにしてくれたら気軽に読みやすかったかもしれません。(川上)
用語集トップ/あ/か/さ/た/な/は/ま/や/ら/わ |