| 白河夜船(20040307sun) 最近、こうやって日記を書くようになってきて何が嫌かって、無意識に生活のふしぶしに「日記のネタ」を探し求めるようになってきたこと。ふと思ったことを「あ、これ使える」と思って、「じゃあ、こういう構成でいこう」と気がついたら文章を組み立てたりしている。しかも無意識的に。しかも、作品そのものからインスピレーションを得るのではなくて、そこに空白を空けて、型を作っちゃう。代入です。で、あっとする。ひやっと。骨ぐまれた文章に。こうやって頭の中で書きとめるようになったことで、今までは意識と一緒に流れていた小さなことを忘れないようになったのは忘れっぽい私にはとてもよいことなんですが、「書くため」に生きているというのはなんだか窮屈な気もします。まるでからめとられてるみたいで癪なんです。でも「書く」と「伝わる」んですよね。私が思って、いつか忘れてしまったことが忘れない。誰かが知ってしまう。たとえ、私が忘れても。それってスリリングです。でもちょっとあさましいような気がして自分を恥じたりする。つまりバランスです。どっちつかずの位置にいることが大事だなあと思う今日この頃です。
「ドッグヴィル」を見てきました。「ドッグヴィル」そのもの、については前に日記の用語でも出ていることなので、あれこれ言いませんが、ブレヒトを意識したというちょっと演劇っぽい舞台構成や、中原昌也がどこかで手放しで褒めていたにコール・キッドマンの耐え忍ぶ顔、など言いたいこともあった気がしますけれども、ただ、これを見ようと思った時に、「今週はこのネタで行こう」と思ったことを告白しておきます。そして「こういう構成で」と思った、構成そのものから逃れるような「想像以上のひどさ」を内包していたことも。 で、これは「ドッグヴィル」の用語としては成り立ちません。だって、逃れられちゃったから。でもそのズレを修正しようとしてもできませんでした。微妙なズレはそのままに。でも続けます。 私が、この映画を見る前に思い描いていたのは、「デンマーク」ということでした。監督のラース・フォントリアーの撮る映画はどれもこれも「絶望」という文字が似合います。あるいは「終わりなし」「袋小路」。救いのないかんじ。平坦なんかんじ。でこぼこしていない、ただ続いて、突然終わる感じ。あるいはずっとそのまま続いていくかんじ。それはとても「デンマーク」的だなあと思っていたのです。 先日、デンマークのお話を伺う機会がありまして。それでデンマークのエコ事情だとか、教育事情とかいろいろ伺って、本当にいい所だと思った一方でなんだか一生をそこでくるまれて過ごしたいと思わなかった。奇妙な違和感でした。柔らかすぎる、と思ったのでした。そしてそれは「光の色」なのだと思いました。 絶望の色は何色かというと、きっと白いのではないかと思っています。お先真っ暗、という言葉もあるのですが、本当に人が絶望したとき、光があふれてあふれつづけて前も見えない。暗闇よりも不安もなく、悲しみもなく、ただ光だけ。そういうのではないかと思っています。 『白河夜船』というのは現よしもとばななさんが吉本ばななさんだったときにわりと初期の頃に書いた「夜」を巡る3つのお話が入った単行本です。どれもこれも濃密な夜のにおいがします。眠り、お酒、思い出・・・暮れてしまった、明けない、そういうものたちが書かれています。この本は解説の原マスミさんの文章とセットで一冊の本というかんじがとても好きで、、『とかげ』と並んで吉本ばなな単行本としてはベストに数えられるもので、いつも夜とかにしっぽり読んでしまうのですけど、随分長い間私はこの本のタイトルを『白夜河船』だと随分勘違いしていて、しかも読み間違えたこのタイトルを「秀逸なタイトルだなあ」と一人で感心していたのだからちょっとバカみたい、と思いつつも、つまりなにが言いたいかというと、この『白河夜船』の「夜」もまた「白い」のではないかとずっと思っていた、ということです。つまり「白夜」です。 『白河夜船』のとても的確な原マスミさんの解説に「地球の朝もまた、宇宙にとっては巨大な夜」というような表現があります。夜とは明けないもの、そして暗闇の比喩でもありますが、白夜は、夜なのに明けている。それがずっと続いている。終わらない。それってかなり絶望の匂いがします。先ほどのデンマークのお話を教えて下さった方も冬の白夜の気がめいる話をしてくださいました。まさに白い、夜、なわけです。 ラース・フォントリアーの、ニコール・キッドマン扮するグレースの、『白河夜船』の登場人物の、そして私の「夜明け」それはどんな色でしょうか。光はどのようにあたるでしょう。そしてそれは「夜明け」なのでしょうか。あらゆる人々のそれぞれの「白夜」は明ける日は、いつ、どのようにやってくるでしょう。 春がきます。今日、早咲きの桜を見て胸がぐぐっとなりました。危うくて。春は「夜明け」に似ています。冬の終わり。夜の終わり。それは、「新し」い?
それとも、続く平坦な日常の続き? でも眠ります。『白河夜船』にも眠りすぎる人が出てきます。まずは眠って、それから起きましょう。起きてから、考えましょう。目が覚めた時、それがきっと夜明けです。それがどんな色であれ。おやすみなさい。そして起きたら、おはよう、そしてではまた今度。別れと再生。小さな死を越えてまたお会いしましょう。それぞれの夜明けの色で。(Bonne)
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