プラスマイナスゼロ(20040119mon)

 ナンパの反対が硬派だということを最近知りました。自分にとってのナンパは、いつも「お茶しない?」の世界でしかなく、まさか「ナンパ」が漢字で書けようなどとは思いもしませんでした。漢字で書けるということ自体が、「ナンパ」の要素を半減させている気さえするくらいです。

 「軟派」という単語を知ってから間もない自分が言うのもなんですが、おそらく軟派なものより、硬派なものを選んで生きてきたような気がします。フランスよりドイツ。キャノンよりニコン。ソニーより松下。クリネックスよりスコッティ。カフェーより純喫茶。ベージュとアイボリー色のベッドよりピンクの花柄の布団。ムーニーマンよりパンパースより布おむつ。なんとなく、「硬派」っぽい気がしませんか。「軟派」をどういう風に定義するかによりますが、ものすごく単純に「流行っているもの」とするならば、プラスマイナスゼロはそれに含まれるのかもしれません。でも、すごくかっこいいと自分は思います。

 プラスマイナスゼロは気鋭のデザイナー深澤直人がタカラとダイヤモンド社と立ち上げた家電プロジェクトです。ご存知の方も多いと思いますし、今店頭に並んでいる雑誌を見れば必ずどこかに登場しているはずなので多くは書きませんが、今までプラスの面ばかりを追っていたデザインをゼロシフトさせて、そこからどう魅力や共有性を持たせるかという意味が含まれているらしいです。どこの町の、どこの役場にもかかげてある「明るく豊かで安心して暮らせる社会を」といった歯の浮いた文句ではなく、正直で無理のない加減が伝わってきて、素直にかっこいいと思いました。

 これに影響されたわけではないのですが、最近ものごとの表と裏、プラスの面とマイナスの面ということに興味があります。たとえば痛くて、むさ苦しくて、イライラして、自分にとって何もいいことのない満員電車でさえ、JRからすればコストパフォーマンスは良いのですから。何事にも絶対的な価値はないということでしょうか。こういうことを考え始めると何が良くて何が悪いのか分からなくなって、本当のことはゼロにしか存在しないのではないかなどと抽象的なことを考え始め、収集がつかなくなります。ぐるぐると蟻地獄にはまっていって、終いには自分がゼロになってしまうような気さえしてきます。

 こんなことになるなら「軟派」じゃなくて「ナンパ」の世界に生きていた方が楽だったかもと、どうしようもないことを考えながら、今日はピンクの花柄の布団に入ることにします。では、おやすみなさい。(小沢)

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