なんとかや(20040105mon)

 14階建てマンションの9階・東南側に位置する我が家から見える位置に「なんとかや」はあります。この「なんとかや」は基本的には味噌を量り売りしており、味噌の入った大きな桶が5、6つ。各桶には大きめ杓文字が刺ささっていて、プラスチック製の山型のふたがかぶせてあります。きっとあの年季の入った量りに乗せて味噌の重さを量るのでしょう。自分が小学生だった頃、良くあのお店の、入って左奥の、一番下の段にあった、水飴を買いに行きました。日本風の面構えをした、暗い店内に、ずらっと並んだこけしが怖かったのを覚えています。それでも、甘くて、柔らかくて、透き通った水飴を買いに、ちょこちょこと通っていました。少し成長して、中学生の頃は、その「なんとかや」におせんべいを買いに行きました。さすがに人生「甘い」だけじゃなくて、「しょっぱい」こともあることを知った頃です。いつも店頭にお徳用として並んでいる割れせん(割れたせんべいがいろいろ入っている)を買って、真っ先になくなるのが、揚げせんべいと、海苔せんべいでした。

 そして今日、出し忘れた年賀状を出しに、ポストへ降りていき、ふとその「なんとかや」の窓を見ると「店内全て半額」の札が貼ってありました。ここら辺も区画整理が進み、道路が2倍くらいの広さになるらしく、この「なんとかや」も立ち退かなければならないらしいです。それでも、隣の八百屋も、呉服屋もずいぶん前になくなったことを考えれば、この「なんとかや」はずいぶん長くそこに居座ったんだなぁ…と思いながら、閑散とした店内に入りました。当時、暗かった店内は、物がなくなったせいか、ずいぶんと明るく、こけしに変わってならんでいたカエルの置物も、なんてことのない顔で鎮座しています。

 さて、この「なんとかや」。実はちゃんと名前があるのですが、今のいままで名前を知りませんでした。「なんとかや」は「むつみや」でした。なくなる前に、どうしても気になって、お店のおじさんに聞きました。そして、実のところ、味噌屋だったことも今日知りました。ずっと水飴とおせんべいの店だと思っていたもので。…とはさすがにおじいさんには言えませんでしたけどね。



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