富岡多恵子(20031016thu)

 今日は一日中、家でもろもろの作業です。朝からメールを書きまくります。昼過ぎ、なんだか気が滅入ってウワーっとなってきました。しょうがない、ちょっと気分を変えて仕入れにでも行くか、ということで出かけると、久々にまとめて入ってきたのは富岡多恵子です。
 僕が初めて富岡多恵子を読んだのは、友人の加藤君が大学時代に一緒に神保町めぐりをした時に教えてくれたのがきっかけでした。読みたいのに絶版になっているものが多くて、古本で探して買うしかないんだと言いながら、何冊か買っていたのを憶えています。彼自身、その頃から小説を書いていて、最近仁君に聞いたところによると今も書いているらしく少し嬉しくなりました。それはさておき、その当の富岡多恵子ですが、彼女は大学時代どんな感じだったのでしょう。ある対談によると、大阪女子大学英文学科在学中、高校のクラス会で友人に小野十三郎の『現代詩手帖』をもらったことがきっかけで詩に興味をもったのが20歳。たまたま向かいの帝塚山女子大学に小野十三郎が来ていたことから、翌年から毎週自作の詩を持って尋ねていったとのこと。それが詩人としての第一歩になった、というわけですね。ちなみにその後は詩だけでなく、小説、評論、エッセイなど数十の著作を残しています。
 ところが現在は、小説『波うつ土地』(講談社文芸文庫)、『水上庭園』(岩波書店)、『銀の匙』の中勘助について描いた『中勘助の恋』、漫才師秋田實について描いた『漫才作者秋田實』(ともに平凡社ライブラリー)、折口信夫について描いた『釋迢空ノ−ト』、エッセイ集『富岡多恵子の発言(全5巻)』(ともに岩波書店)以外の作品は絶版もしくは入手困難。今日仕入れたものも、新刊では買えないものばかりです。コンテンツの予告のところに「野坂昭如と富岡多恵子」と書いていますが、その2人を一括りにしたのはその辺りの事情もあります。つまり、時代を同じくして近しく活躍したという点だけでなく、ちょうどその頃の作品が今はほとんど絶版になって読めなくなってしまっているという点でも、この2人は共通しているのです。この間、仁君が「もうすぐ阿部公房も少しずつ絶版になっていくような気がする」と言っていました。悲しいですが、出版社の存続と新しい作家の活躍、という2つを考えると仕方がないことなのかもしれません。少なくともそこをフォローアップするのが僕ら古本屋の役目ですから、これからもがんばっていこうと思います。(内沼)

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