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「本好きのための美術案内」書籍紹介 その2 @ DIC川村記念美術館

DIC川村記念美術館で開催中の「絵の住処ー作品が暮らす11の部屋」展に合わせて、
開催した「本好きのための美術案内」。

そこで選んだ約50冊の本の内容を入れ変えて、
日本画展示室の奥にある茶室にて展示しております。
1月11日まで、あと1週間ほどの展示期間ですが、
普段なかなか見られないコレクションが展示されているおすすめの展示です。
お庭もすてきですので、お時間ありましたら、
ぜひ新年の季節を感じながらの美術鑑賞に足をお運び下さい。

以下に、展示中の本の一部をご紹介します。


《104 前衛美術の部屋》

『考現学入門』今和次郎 ちくま文庫
 for クルト・シュヴィッタースの作品群
第一次世界大戦の後、シュヴィッタースは「戦争は終わったが、
世界は瓦礫の廃墟となった。私はその断片を集め、新しい世界
を創り出したい」と言い、『メルツ』という芸術活動を始めまし
た。日本でも関東大震災の後、何もなくなった瓦礫の中、近し
い発想で活動を始めた二人がいました。その一人、今和次郎に
よって「考現学」の名で提唱され、今も続く様々な活動に受け
継がれています。

『ラグクラフト傑作集1』大西尹明 訳 創元推理文庫
 for ルネ・マグリット 《感傷的な対話》
マグリットは、絵画とは思考を目に見えるようにし、それによっ
て「神秘」を呼び起こすものだと語り、「ピルボケ」と呼ばれる
フランスのけん玉を擬人化したモチーフを繰り返し作品に登場
させました。文学においても同じように、架空の神話を数人の
作家たちが小説の中に描くことで、実際に存在するかのように
思わせた「ク・リトル・リトル神話」があります。まずは、そ
の代表と言える、H・P・ラヴクラフトの作品を選びました。


《105 ジョゼフ・コーネルの部屋》

『稲垣足穂大全Ⅰ』稲垣足穂 現代思潮社
for 105 ジョゼフ・コーネルの部屋
コーネルは画廊で見たシュルレアリスム芸術に惹かれて活動を
はじめ、あるときから両手で抱えられるほどの大きさの箱にお
気に入りの収集品をおさめることで、小宇宙を創りだします。
その小宇宙をまるで言葉で構築したかのような書物として、稲
垣足穂の「一千一秒物語」を思い浮かべました。独特でありな
がら子供心あふれる世界観がとても近しく、その文章は、まる
でコーネルの作品に寄せられているかのように感じます。


《106 マーク・ロスコの部屋》

『カフカ小説全集3 城』池内紀 訳 白水社
for 106 マーク・ロスコの部屋
ロスコの絵画を前にしたとき、他にはない絵の力に圧倒されて
しまいます。しかしそこには、どうしても辿り着かない果ての
ない奥行きのようなものも感じさせ、この辿り着かない感じが、
フランツ・カフカの『城』を思わせました。主人公のK は、物
語の始まりから城に向かうも、いつまでも城に辿り着かず翻弄
され続けます。対象が不気味に掴みとれず、にも関わらず他に
はない感動を与える点でも、極めて近い印象を受けます。


《200 バーネット・ニューマンの部屋、あるいは抽象表現主義の部屋》

『妙好人論集』柳宗悦 岩波文庫
for アド・ラインハート《抽象絵画》
ラインハートは、徹底して芸術の純粋性に向かい、退屈とも思
われかねない黒い正方形の絵画を書き続けました。柳宗悦の『妙
好人論集』には、「南無阿弥陀仏」の言葉を唱えことに信心深い
人々(妙好人)のことが描かれています。その姿は一見単純な
ようですが、そこには、柳宗悦をして、仏教を見なおさせた究
極的な思索がありました。黒い正方形を描き続ける作家の姿に、
念仏を唱える妙好人の面影が重なります。


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※「本好きのための美術案内」での書籍ご紹介 その1
http://www.bookpickorchestra.com/report/2015/11/_dic.html

※「絵の住処ー作品が暮らす11の部屋」
http://kawamura-museum.dic.co.jp/exhibition/index.html

※DIC川村記念美術館
http://kawamura-museum.dic.co.jp/index.html

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