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活版印刷で豆本をつくってみる

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きじまです。

今日は、宮本三郎記念美術館で催されていた、オールライト工房さんのワークショップにお邪魔しました。

オールライト工房さんは、今ではほとんど使われなくなった活版印刷の機械を使って、味のある名刺やポストカードなどを製作しているデザイン&印刷事務所です。

今回、ワークショップで使用されていたのは、小ぶりながらどっしりした、手動のしぶいやつ。
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30年ぐらい前のものだそう。

活版印刷というのは、ようするに版画と同じで、でっぱり=文字の部分にインクをつけて、紙に押し付けて印刷する、というもっとも原始的な印刷法。
いまはオフセットという印刷法が主流になり、あまり使われなくなりました。
上部の円盤がパレットのような役目を果たし、レバーを上下させることでローラーにインクをつけると同時に、印刷もしてしまうという、職人の知恵を感じさせるメカニズム。

紙をセットして・・・
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ガシャン!
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あとは印刷された紙をおりたたみ、ホチキスで留め、三方断ち(=本の背以外の三辺のはじを切り落とすこと)をして完成!
かわいい本ができました。(自宅の文庫本と大きさを比較)
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文章は、宮本三郎がルオーについて書いた文章(1951年の美術手帖掲載)から引用。

やはり活版で刷られた文字には独特の味があることを再確認。
「ブツ」としての本を感じさせてくれます。


ちなみに下の写真にぎっしりうつっているものは、行間や文字間のすきまを調整するための「込めもの」とよばれるもの。鉛でできています。
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活版は一文字一文字、手作業で、文字の型を並べて組み合わせて、1ページ分の印刷用の板(版下といいます)をつくります。
そして、印刷されない行間や、文字のあいだの微妙な調節のために、込めものをあいだに挟んできれいなレイアウトをつくるわけです。すべて手作業です。
ものっすごい手間がかかるわけです。それで何百ページという本をつくってきたのです。

そんなプロセスや歴史を知ると、本の見え方がまた違ってくるように思います。
昔に書かれた本を読むとき、当時それが本として作られた、作られ方のことをふと思う。
行間にひそむ鉛の存在感。
紙の空白にすら「ブツ」を感じさせる「本」は、中身の読まれ方にもきっと何かの影響を与えていた。
そこにあえて古い本を手にとってみたくなる動機があったりもするんです。


きじま

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