旺文社という出版社を知っていますか?どこかで聞いた憶えがあるな、という人は、よく勉強をしてきた(あるいはしている)人かもしれません。そう、旺文社は、学習参考書や辞書を中心に出版している会社です。名前を憶えていなくとも、誰しも必ずや学生時代にどこかでお世話になっているでしょうし、英検やTOEIC・TOFELなどを受けたりしている人にはまさに定番です。

 そして、古本好きの方はもちろんご存知でしょうが、そんな旺文社も昔は文庫本を出していました。その名も旺文社文庫。昭和40年に創刊され、数々の名作を世に出してきましたが、昭和62年に惜しまれつつも廃刊。今は全て絶版になってしまっています。そのため、他の文庫に移されたりしないまま、旺文社文庫でしか読めなくなってしまったものなどは、特に高い値段で取引されています。

 ところが旺文社文庫の価値は、それだけではありません。今でも岩波や新潮などの文庫で読めるような有名な作品でも、あえて旺文社文庫版が欲しい!と言いたくなるような、「ならでは」の素晴らしい点が2つあるのです。そのポイントとは・・・
 



 やはり、ずっと学習参考書を出していたからなんでしょうか。ほとんどの文芸書には、ものすごく詳しい解説のページがあるのです。「人と文学」「作品の解説と鑑賞」といった項目からなるいわゆる「解説」。収録されている作品以外の代表作について一つずつ紹介(!)した、「代表作品解題」。かなり詳細にわたる「年譜」。それに加えて1〜2名の作家や学者などによる5ページほどの文章。作者や訳者によるあとがき。その他もろもろが収録され、合わせて少なくとも20〜30ページ、時には50ページ以上にもわたる資料が巻末についているのです。今、他にこんな文庫があるでしょうか!しかもそれを書いているメンツも、モノによってはかなり凄いんです。



 旺文社文庫の表紙は、ほとんど全てが一枚の絵です。油絵だったり水彩画だったり、時には写真だったりする一枚の絵に、シンプルなフォントで書かれるタイトルと著者名。思わず部屋の片隅に飾りたくなる、渋くてかわいい表紙のものが多いです。

 そんなわけで、ぜひ今の文庫本も旺文社文庫に学んで頑張ってほしい!と願いつつ、積極的に仕入れて並べていこうと思います。お気に入りの一冊をぜひ見つけてください。
 
K00380/ヴェニスの商人/シェイクスピア(著)大山敏子(訳)/旺文社文庫/1966・重/700円

シェイクスピア、初期喜劇の代表作。

 シェイクスピアは時代ごとに「喜劇」「悲劇」「ロマンス劇」と分類できるそうですが、この『ヴェニスの商人』は『ロミオとジュリエット』などと同様、初期「喜劇」時代の代表作にあたります。本文中には1950年代のオールド・ヴィック劇団という劇団の上演の写真をふんだんに使用。劇の臨場感と共に味わえる旺文社文庫の名作です。 (内沼)
詳しい解説は?
シェイクスピア研究の重鎮大山敏子による18Pにわたる解説、演劇評論家河村登志夫による「ヴェニスの商人と私」、その他20Pにわたって代表作品解題、参考文献、年譜、あとがき。
かわいい表紙は?
クイーンズ劇場(1938年)の写真



K00379/ゲーテ詩集/ゲーテ(著)井上正蔵(訳)/旺文社文庫/1968・24刷/sold

ゲーテの詩集を、井上正蔵の名訳で。

ハイネをして「自然は自分のすがたを見たいと思ってゲーテを創造した」と言わしめたゲーテの詩(カバー見返しより)。だれしもひとつふたつは、教科書などで読んだことのある詩にぶつかるでしょう。現在の新潮文庫版は高橋健二訳。この井上正蔵訳は、グーテンベルク21というところからデジタルで買えるようです。
(内沼)
詳しい解説は?
ドイツ文学者井上正蔵による解説、代表作品解題、参考文献、年譜が26Pにわたる。

かわいい表紙は?
岡本半三



K00620/O・ヘンリー短編集/O・ヘンリー(著)大久保博(訳)/旺文社文庫/1974・4刷/1100円

江國香織も、影響をうけているそうです。
起承転結がはっきりしている、いわゆる物語っぽい作品といえば、の大御所。僕はなぜか、昔読んだこち亀で、両津の書いた本がヒットして取材陣に「最初に読んだ小説は?」という質問を受け、中川が耳元で「O・ヘンリ短編集」とささやいている場面が思い浮かびます(ちなみに両津は「ドストエフスキー」と答えてしまいます)。どうでもいいですが。全部で二十一編を収録。(内沼)
詳しい解説は?
マーク・トウェインなどの訳で知られるアメリカ文学者大久保博による解説、参考文献、年譜、あとがきが全部で43Pにわたる。
かわいい表紙は?
武部本一郎



K00378/怪談 他四編/ハーン(著)繁尾久(訳)/旺文社文庫/1972・重版/800円


ラフカディオ・ハーン=小泉八雲。
受験日本史にも出てきますね。横浜港に降り立ったのが39歳、島根県の松江をこよなく愛し、日本に帰化した彼は、日本の生活・古典の研究をし、海外へと紹介しました。この文庫にはみんなご存知「耳なし芳一のはなし」から始まる「怪談」の他、「骨董」「知られざる日本の面影」「日本雑記」「仏の畑の落穂」の四編(抄)が入っています。(内沼)

詳しい解説は?
繁尾久による「人と文学」「作品の解説と鑑賞」からなる40Pにわたる解説、実孫である小泉時による「八雲の身近」、その他代表作品解題、年譜、あとがきがさらに20Pにわたる。
かわいい表紙は?
井上洋介



K00534/改造人間の島 他三編/H.G.ウエルズ(著)橋本槇矩(訳)/旺文社文庫/1977・2刷/700円


タイム・マシンの生みの親です。

H・G・ウェルズといえば、『タイム・マシン』を思い浮かべますね。なんでかって、あの泣く子も笑う夢の国、ディズニーランドのアトラクション、ビジョナリアムにすら登場するわけですから、これは認めるしかありません。とはいえ、宇宙旅行、透明人間など現在まで氾濫するSF用語は彼が考えたといわれるほどのSFの父なのですから…他の作品だって、面白いんです。現タイトルは、『モロー博士の島』。(川上)

詳しい解説は?
橋本槙矩による「ウェルズの人と文学」9P(他と比べるとちょっと控えめ)の解説とあとがき。その他
年譜、あとがき。
かわいい表紙は?
橋本勝




K00589/友情論・恋愛論/ボナール(著)山口年臣(訳)/旺文社文庫/1968・重版/sold

恋愛論といえばスタンダールだと思っていませんか?

アベル・ボナール。ここに並べた他の作家と比べると、いささか知名度は低いかもしれません。ご存知の方がいても、今も中公文庫から出ている「友情論」でではないでしょうか。ところが、フランス文学における「モラリスト」の系譜にスタンダールと共に位置づけられる彼にも、じつは「恋愛論」という著作があります。そしてこのボナールの「恋愛論」は、ボナールにおいては恋愛よりも友情のほうが高い位置にあること、スタンダールの「結晶作用」以後の関係について扱っていることなど、比較対象としていろいろ面白い作品なのです。(内沼)

詳しい解説は?
山口年臣による「作品成立の背景」「人と作品」からなる解説12P、本田顕彰による「真の友情の栖」4P。そ
の後あとがき。
かわいい表紙は?
浮田克躬




K00590/恋愛論 /スタンダール(著)白井浩司(訳)/旺文社文庫/1972・5刷/800円

59章+断章からなる、恋愛論の超古典。

スタンダールといえば『赤と黒』でしょうか、いえいえ絶対『恋愛論』です。スタンダール自身が失恋したてに書いた本作は、思うがままスラスラと書きなぐった結果、はっきりいってちょっと乱雑。緻密でしっかりした分析とは、ちょっと言えません。分厚いですし。しかしだからこそ、拾い読みでも飛ばし読みでも、妙に面白い。ちなみに発売10年で17冊しか売れなかった、という逸話も。(内沼)

詳しい解説は?
白井浩司による「人と作品」「作品解説」「作品鑑賞」からなる18Pにわたる解説の後、大岡信による9Pにわたるエッセイ「すべてが懸念 すべてが希望」、代表作品解題、年譜、あとがきと続きます。

かわいい表紙は?
山野辺進




K00573/トーニオ・クレーガー 他一編/トーマス・マン(著)植田敏郎(訳)/旺文社文庫/1970・重版/900円

ノーベル賞作家トーマス・マン、初期の名作。
『魔の山』などで有名なドイツの作家の、初期の傑作。評価も高いです。もう一編の「ヴェニスに死す」は、あのルキノ・ヴィスコンティの代表作「ベニスに死す」の原作です。ちなみにこれ、岩波文庫から実吉捷郎訳で、最近改版が出たばかりです。タイトルは
『トニオ・クレエゲル』。読み方もいろいろってことですね。(内沼)
詳しい解説は?
植田敏郎による「人と文学」「作品鑑賞」からなる19Pにわたる解説、吉行淳之介による「忘れ得ぬ断章」というエッセイ、その後15Pにわたって代表作品解題、年譜、あとがきと続きます。
かわいい表紙は?
鳥居雅隆

■その他にも続々入荷中!
K00687/愛の妖精/ジョルジュ・サンド(著)篠沢秀夫(訳)/旺文社文庫/1966 重版/sold円
 ◎秦早穂子が解説を書いています。
U00274/ハイネ詩集/ハイネ(著)井上正蔵(訳)/旺文社文庫/1969 21刷/800円
 ◎井上正蔵による解説・代表作品解題・年譜合わせて27P。
U00275/さすらいの青春(ル・グラン・モーヌ)/フールニエ(著)田辺保(訳)/旺文社文庫/1972 重版/700円
 ◎田辺保による解説・文献紹介・年譜・あとがき合計38Pの他、映画評論家荻昌弘による批評5Pを収録。
U00278/鏡の国のアリス/ルイス・キャロル(著)多田幸蔵(訳)/旺文社文庫/1975 重版/900円
 ◎あの高山宏が20代、まだ助手だった頃に書いた(!)27Pにわたる解説・代表作品解題は見事で、訳者も大絶賛。
U00302/狭き門/ジイド(著)村上菊一郎(訳)/旺文社文庫/1970 23刷/700円
 ◎村上菊一郎による解説14P、新庄嘉章による代表作品解題・年譜合計15Pに加え、画家の松任谷国子が4Pのエッセイを寄せている。
U00306/野生の呼び声/ロンドン(著)龍口直太郎(訳)/旺文社文庫/1968 15刷/700円
 ◎龍口直太郎による解説33P、平岩米吉による文章5Pの他、代表作品解題・年譜と充実。
K00622/春の嵐(他)秋の旅路/ヘルマン・ヘッセ(著)石丸静雄(訳)/旺文社文庫/1967・初/700円
K00897/ロウソクの科学/ファラデー(著)日下実男(訳)/旺文社文庫/1974 初/700円
U00236/にんじん/ルナール(著)辻昶(訳)/旺文社文庫/ 700円


■日本も名作ぞろい。
U00277/二十四の瞳(他)ピアノ・極楽横丁/壷井栄/旺文社文庫/1965・重版/700円
 ◎表題作の他「ピアノ」「極楽横丁」を収録。鳥越信による解説・代表作品解題・文献紹介・年譜合計30P の他、木下恵介と坪田譲治がそれぞれ4Pの文章を寄せている。

U00276/こころ 他一編/夏目漱石/旺文社文庫/1966 重版/700円
 ◎表題作の他「文鳥」を収録。稲垣達郎による解説・代表作品解題・文献紹介・年譜合計35Pの他、堀秀彦と松岡譲がそれぞれ3Pの文章を寄せている。
U00285/歴史のヒロインたち/永井路子/旺文社文庫/1982 初/800円
 ◎対談集。司馬遼太郎、大岡信、篠田正浩、円地文子、丹波文雄などと、歴史上の女性について語る。
K00618/天平の甍 他一編 /井上靖/旺文社文庫/1968・23刷/600円
K00679/和解・城の崎にて (他)清兵衛と瓢箪・小僧の神様・焚火・濠端の住まい/志賀直哉/旺文社文庫/1966 重版/600円
K00767/雪国 他二編/川端康成/旺文社文庫/1966 重版/750円
K00062/ハンカチの鼠/戸板康二/旺文社文庫/1982 初/A /1500 円
U00245/考えることについて/串田孫一/旺文社文庫/1979 重/B/1000円
U00471/浮雲 他三編/二葉亭四迷/旺文社文庫


■旅系エッセイも充実しています。
K00536/アメリカがつぶやく -出会いと再会の旅-/中山俊明/旺文社文庫/1984 初/800円
K00537/ニューヨーク郊外の学校で/飯泉美耶子/旺文社文庫/1984 初/800円
K00642/晴れた日のニューヨーク/常磐新平/旺文社文庫/1987 初/850円