第1回 川上洋平×竹沢仁(聞き手:内沼晋太郎) 2004年1月28日@都内某所


仁:これ(在庫の本)ってさ、手放したくなくなったりしないの?

沼:あー、おれは古本屋始めたとたん、まったく執着なくなったね。

川:え!おれはなるなー。

沼:でもそれって買ったときに、自分の本棚に入れちゃえばいいじゃん。

川:いや、結構おれここに持ってきちゃってるんだよね。例えばこのロブグリエとか、売りたくないなー。

仁:それって失格なんじゃないの。

川:・・・。

沼:なら、これ(1)でも読んだらどう?

川:おれこれ少し読んだよ。何人かの古本屋の人が出てくるんだけど、例えばある人は、周りの人に稀少本を扱ったほうが儲かるよ、とか言われるんだけど、古本が面白いのは、いま雑魚扱いされてる本が何年後かに価値が出たりするのが面白いんだっていって、雑魚本にこだわるんだよ。

沼:うちもあれだね、そんなに稀少本とか多くないっていう意味では、同じ考え方だよね。珍しいかどうかじゃなくて、面白そうかどうかで選びたいし。絶版だから面白い、ってわけじゃ当然ないしね、普通に考えたらむしろ逆なわけで。もちろん、そうじゃない面も往々にしてあるんだけど。

1
川:そうだね。でも、とはいえどんなに高いっていっても、本って安いよね。

仁:安い。服とか高いもんな。古本儲からないから、服とかつくる?しかも欲しい服とかかばんとか、なかなかないしな。

川:買い物も面倒くさくてさ、なかなか買わないよね。靴とかは、減るから買うけど。

仁:あー、あの、減っていく感覚はあるよね。昔ゲームで、ドラクエとかと違って、ファイアーエムブレムとかSAGAとかって武器が減るじゃん。ガキの頃とか、服とか靴とかに関してそういう感覚はなかったけど、実際、もう本当に減るね。

川:SAGA!2でさ、最後地震が起こるじゃん。あれが目がチラチラしてさ、むかついた記憶があるな。確かに、道具減っていったかも。

2
沼:やったけど、憶えてないなー。道具ってことでいうと、これ(2)がすごくて。82年の本なんだけど、こういう古いドラマに出てくる留守電とかさ。あと、マビカっていう、いまでいうデジカメみたいのが既にあったの知ってた?メモリーカードみたいの挿して撮って、ビューアをテレビにつないだりして使うんだけど。このライターの人も的確で「これはカメラではなくテレビなのだ」みたいなことを言ってて、面白い。

仁:へー、全然知らなかった。

川:あと、ゲームっぽい本ってなんだろう。

仁:あ、そしたらこのアポリネールの小説(3,4)は、完全にエロゲーだった。

川:ほんとに?どういうところが?

仁:最近のは知らないけど、エロゲーってさ、特有のご都合主義みたいのがあったじゃない?気づいたら山の中の館にいてそこには女主人と三姉妹しかいない、みたいな。これは設定がまさにそういう感じで。昔、やらなかった?エロゲー。

川:中学生くらいのころにあるなー。おれマックだからさ、エミュレータみたいの使うしかないんだけど、あの、クリックするやつあるじゃん。あれ、途中でフリーズしてさぁ。すげーうけた。

沼:あー、そんなゲームもあったよねー。

仁:このアポリネールはさ、個人的に、けっこう理想的なエロスなんだ。すごい明るくって、挿絵もさ、こういうのが好き。

沼:一方、野坂とかのエロス(5,6,7,8)はどうなのかな。


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5(sold)678


9

10


仁:あー。野坂とかも何かすごい共感したりするけど、でも対極だよね。日本のちょっと前のエロスって、暗い印象があるな。「陰」って漢字が似合う感じの。そういうのにおれ、ちょっとついていけないところがあって。

川:そうだね、たしかに。

仁:うん。それに比べると、アポリネールはもう太陽の光に祝福されたエロス!っていうかさ。よくわかんないけど。

川:たしかに。そういう意味でいえばサド(9,10)とかも、もう悪徳とか言い切ってるが故に、イエーイっていう感じで盛り上がってて。最低なんだけど、明るいんだよね。

仁&川:・・・こんな話で大丈夫?

沼:大丈夫、大丈夫。まぁ一回目だしね。

■肴にした本■購入方法
1 K00726/古本屋奇人伝/青木正美/東京堂出版/1993/初/A/1500
 「いつか古本屋の本道からは外れてしまった」5人の古書店主の、「愛すべき奇矯、奇行ぶり」を描いた本。
2
U00530/別冊宝島28 新しい道具の本 道具たちの地図を塗りかえる/JICC出版局/1982/初/C/1200
 80年代に最新だった道具の数々を、独自の基準で分類した本。若き日の藤幡正樹氏の姿も。
3 U00308/若きドン・ジュアンの冒険/ギヨーム・アポリネール(著)須賀慣(訳)/角川文庫/1975/初/B/sold
 『一万一千本の鞭』に続くエロ小説。生活の助けにするために書いたもので、匿名で出版された。カバー・挿画は大沢泰夫。
4
U00558/ユリイカ 1979.1. 特集*アポリネール/青土社/1979/C/sold
 20世紀前半のフランスの詩人・小説家。「シュルレアリスム」という言葉を最初につかった人としても有名。
5
U00269/エロ事師たち/野坂昭如/新潮文庫/1970/3刷/C/sold
 解説澁澤龍彦、カバー宇野亜喜良。現在も出ていますが、表紙がひじょーーーにかっこ悪いものに変わってしまいました。
6
U00118/四畳半色の濡衣/野坂昭如/文藝春秋/1977/B(カバシミ)/1000
 戯作。題は伝・永井荷風の名作から。ちなみに、後にVシネ化もされお宝になってるとか。現在、文春ウェブ文庫版で入手可。
7
U00119/エロスの妖精たち/野坂昭如/中央公論社/1971/初/B(小口シミ)/900
 野坂コレクション全3巻から漏れたことを嘆くファンも多い、隠れた名作。装丁徳川義英。
8
U00231/受胎旅行/野坂昭如/新潮文庫/1972/初/D/1000
 解説富士正晴、カバー宇野亜喜良。10編からなる短編集。(状態がとても悪いので、気になる方はお問い合わせください)
9,10
K00838/悪徳の栄え(正・続)/マルキ・ド・サド(著)澁澤龍彦(訳)/現代思潮社/1976・1959/新装4刷・2刷/2000(2冊揃)
 (現代思潮社版 正:続: 河出文庫版 正:続:
 サドの代表作。続編は発売禁止処分になり、日本ではしばらく読めなかった。