今回の携帯往復書簡、全内容

再開は突然に。
こんばんは。というわけで『ウ゛ィーナス・プラス・X』の対談編をやってはみたものの形にできないまま今に至るわけだけれど、今度は同じスタージョンの『海を失った男』を読んでみるのはどうだろう? 本当に、予想以上に僕らは人間としてひどいね。ウチヌマくんも愛想を尽かしていることだろうよ。こんなどこの馬の骨とも知れないやつらに、つくづくうんざりしているんじゃないかな。合わせる顔もない。しばらくはこうしてひっそりと続けようね。
今度こそ、しっかりするのさ。
'05.10.25(Tue) 22:04:46

Re:再開は突然に。
やばい、ブログへのメアドも携帯から消えてるや。送ってもらっていいかな?まだ使えるかな。。。ほんとにひどいもんだよね。忙しさにかまけてさ。できればスタージョン2冊目が終わるまで、だれもこの更新に気付かなきゃいい。ひどいざまだけどうちらも反省したしさ。がんばりたいよね。明日買いに行ければいいな。
'05.10.25(Tue) 22:58:07

Re:Re:再開は突然に。
どうやらこのアドレスはちゃんと使えるみたいだね。ひとまずはよかった。
今は会社の帰りなのだけど、地元の深夜まで開いてる書店に寄って探してみるつもり。スタージョンの短編はすごく高い評価を受けているようだね。
'05.10.26(Wed) 22:43:38

今、買いました。
もっと短いかと思ったけど、意外と分厚いね(笑)。文字詰めはややゆったり目だけどね。明日は会社の飲み会だから、読み始めるのは明後日になるかな。
あと編者は若島正でした! やったあ。期待できますよ。適当に決めた割には、うまいこといきそうだ。
'05.10.26(Wed) 23:55:17

Re:今、買いました。
おおー先に購入したのだね!私もさっそく新宿の紀国屋に在庫を確保して、今日とりに行こうと思ってたんだけど、阪神は負けたし社長と飲みだったしで行かれなかったよ。明日は行かれたらいいな。最近本読んでなかったから恐いけど楽しみさー
'05.10.27(Thu) 00:24:07

今から。
やあ!本は手に入れてたんだけど、なんだかんだでスタートせず。今日は時間があるから今から読みはじめてみるよ。ほんと、短篇集とはいえ思ったより厚いね。そして高かった笑。あんまり持ち合わせがなかったから、帰りに韓国料理屋でカムジャタン食べられるかちょっと心配したりして。食べられたけど。
'05.11.03(Thu) 23:55:02

Re:今から。
僕もあんまり読み進んでないよ。今は「成熟」という作品を読んでるところ。この短編集、最初は「?」な感じだったけど、だんだん面白くなってきた。「成熟」も興味深く読んでいるよ。
この作家はSFという枠組みを必要としていたのだろうけど、どうしてもそこからはみ出してしまうんだね。その結果、作品が作家のドキュメンタリーみたいになってしまう。『ウ゛ィーナス・プラス・X』もそう(あれはきれいな作品だったけど)。作者がどういうつもりで書いているのか読者にはよくわからなくても、過度な切実さがにじみ出てることだけは感じるでしょ? 僕が好きなタイプの作家だな。
'05.11.05(Sat) 14:30:12

さて。
僕は今日はこれから古井由吉の朗読会に行くんだ。電車の中で続きを読もう。この本は、今月中に読み終われればいいんじゃないかな。そのくらいでいこうよ。
'05.11.05(Sat) 14:33:48

Re:さて。
今月中くらいに読み終わるってので了解。なんか今日は福祉イベントの取材で、今ショーパブのインタビュー原稿をまとめ終わって、これから税についての原稿を書くよ。先週眠り続けてたからでしょうがないんだけど、一気にやると脈絡のなさにあんぐりする。今回の本は反省本としてのスタートだったけれども新たな本の旅には変わりないわけで、またこの本が自分と生活ときみと交ざりあってどうなるのか楽しみにしているよ。
'05.11.06(Sun) 20:41:56

Re:(1/2)Re:今から。
今私は「ビアンカの手」を読んでるよ。「ヴィーナスプラスX」はSFって感じたけど、今の段階だとファンタジーっぽいなぁ。寓話っていうか。ヴィーナスプラスXより内面に強く力が動いているように感じて。過剰なまでの妄想力の「扱い方」がさ。「ビアンカの手」で、途中からビアンカと手が完璧に別の生き物として切り離されて書かれているところとか。現実にはもちろんビアンカと手は同一人物で、男もそれは認知しているのに、途中から現実(客観)の目を手放したよね。客観をぬいた妄想が書かれる世界のすべてになるってのはヴィー
'05.11.06(Sun) 21:13:17

つづき
ナスプラスXにはなかったと思ったけど。女子高生の思考寄り?いや、他の短篇もあるしまだわかんないよね。少しだまって読みすすめるよ。きみのいう過度な切実さっていうのはもちろん感じているよ。(池田)
'05.11.06(Sun) 21:13:38

あっ。

名前を入れるの忘れてた! 相変わらずすごい日常を送っているみたいだね。しかも寝過ぎているって(笑)。しかたないな。
池田さんはわかってくれると思うけど、この企画はどの本を読むにしてもひとつの旅だし、まず僕らの日常が旅だよね。僕らには生活がない、なぜなら僕らは「世の中の居候」(BY池内紀)だから。スタージョンもそうだったんじゃないかな。
確かにこの短編集は寓話的だ。でも『ウ゛ィーナス・プラス・X』もかなりの妄想シミュレーションだった。取りあえず「成熟」を読んでみて! あれは、すごいよ。(仁)
'05.11.07(Mon) 00:41:55

続けて
「シジジイじゃない」を読んだよ。来週まで毎日22時くらいまで会社にいなきゃいけないくらいには忙しくて、なかなか読み進まないなあ。でもおもしろかった。
読んでいると、登場人物が何にこだわっているのか・何を話しているのか、よくわからない部分がある。ちょっと理解できないというか、少なくとも共感できない部分がね。それもまた気になってしまうんだけど。「シジジイじゃない」は、感触的に『ウ゛ィーナス・プラス・X』に近いところがあったな。
謎なのは、多かれ少なかれ作者が投影されているらしき主人公たちが、なぜか一様に幸せな結末を迎えられないということ。かといって不幸な感じもしないし。これは何だろう。(仁)
'05.11.09(Wed) 22:50:06

あ、
あと君がこの前書いていた、主観・客観の話、僕はこないだのメールではとんちんかんな受けこたえをしていたね。君の言うことはわかります。僕も最初は君の言葉でいうと「意外と主観的だな」って驚いていたんだ。最初の2編はそうだったね。(仁)
'05.11.09(Wed) 22:57:57

明日は。
ようやっと入稿ラッシュが終わったんだ。明日は一日ゆっくり本を読んでるつもり。遅くてごめん、まだ成熟を読んでる。でも、この本はヴィーナスプラスXより読みやすくて、しかも私が好きな部類だよ。なんというか、寓話ぽく感じるのはストーリーのすすみ方がわかりやすいのと同時に、なんか鮮やかなんだよね、ビビット。読んでて受ける印象が。それが絵本ぽいというか。なにがそう感じさせるのか気にしながら読んでる。あと、会話かな。ストーリーも、わかりやすいけど、この先どうなるのかわかんないんだよね。はやく続きを読みたいな。
'05.11.23(Wed) 01:00:20

成熟。
今成熟を読み終わった。昼間から駅のワインバーでちびちびやりながら(笑)。この話には、ヴィーナスプラスXにもでてきた、作者の定義が後半でてきたね。そして前本より私たちが話し合うネタは多いって感じがする。忘れないよう言っておくけど「成熟」については私たちも、本中、サロンで言い合っていたロビンと仲間達のように話してみよう。
'05.11.23(Wed) 16:05:12

Re:成熟。
こんばんは。確かに「成熟」については話してみたいね。スタージョンはメールで語り合うのが難しい気がするんだけど、何でだろう。
君と僕の対談編は、いくつか気になった作品を選んでやろう。もちろん「成熟」も入れて。この短編集は若島正が編んだアンソロジーだから、作品単位で話した方がいいと思うんだ。(仁)
'05.11.24(Thu) 01:03:48

ところで実は
僕はこの本、先週の段階で読み終わっていたのでした。あまり僕ばかりメールしたくなかったから、君のメールを待っていたんだ。今回はやり取りが少なめだよね。それは忙しいのもあるのだろうけど、先にも書いたように、この作家の作品がメールでは語り難いからなのだと思う。
読んでいると、細かいところ、ここやそこが気になってしまうんだ。「何でそうしたんだ?」「 じゃあどうするんだ?」 「それはどういう意味だ?」とか。「三の法則」なんかは比較的わかりやすいSFだったけど、ゆえに僕は特に惹かれなかった。僕が惹かれたのは、「成熟」と「そして私のおそれはつのる」(素敵な恋の話だなー)、それから「海を失った男」(何かすごかった)。でも「シジジイじゃない」も話したら面白そう。(仁)
'05.11.24(Thu) 01:18:46

そうだったのかー!
おはよう、最近ほんとに天気がよいね。そうか、もう読み終わっていたんだね。きみの作品へのコメントをみて、がぜん読む気がわいてきたよ。スタージョンをメールで話すのが難しいのは、私個人としては、作品を通して投げ掛けられている問いのスケールが大きかったり、普遍的なものだったりしていて、一個人の判断だけですませるのがためらわれるからかな。(池田)
'05.11.24(Thu) 12:57:21

男手だって悪くない。
仕事帰りに友達とイッパイひっかけて帰ってきて、今「シジジイじゃない」を読んでるよ。これはまた今までとうってかわった文体だね。前作をひきずらずに様変わりできるのが短篇ものの魅力だなぁとしみじみ思ったり。この文体、好きだな。スピード感があって、少し暴力的で、不器用で裏表がなくて教養を取り繕おうともしない。女性的な、繊細で葉脈みたいにうにゃうにゃした感覚を書く、みたいな女手の書き方はよくとりあげられるけど、それでいったらこれは男手だなぁ。わざわざ女性化しなくたって、男手も充分魅力的なんだよね。(池田)
'05.11.25(Fri) 01:41:59

Re:男手だって悪くない。
ここ数日は日中、本当にあたたかいよね。最近、会社の同期が長野に長期出張になってしまって、他にそこまで仲のいい人もいないから昼休みはひとりでスターバックスで読書しているんだけれど、店外の喫煙席でも気持ちよく過ごせるよ。冬にちょっとしたプレゼントみたいな感じ。
男手、何となくわかります。いわゆる女手ほど確立したイメージは浮かばないけどね。関係あるかわからないけれど、この作者は不器用だと思うよ。君の言うような大きな問いかけの一方で、人間的な側面が見えてしまうし、きれいにまとまるとあまり面白くないしで。それがよいなあと思った。で、シジジイって何なんだろうね?(仁)
'05.11.26(Sat) 16:44:58

ああすっかり
11月中に読み終わるとか言っといて、全然読み進んでなくてごめん!週末に読むつもりだったんだけど仕事と、バイク事故で(ケガはくじいたくらいなんだが同僚のバイクをかなり傷つけてしまった)読むゆとりがなかったよ。とほほ。今週末は読めるように今から仕事をがんばります!同僚が長期出張とは淋しいだろうけど、お別れではないからいいね。そう、私はまた新しい街に恋に落ちてメロメロしてうっとりした。書いてて気持ちが悪いけど、まぁ恋にかぶれたらこんなものでしょう。では、おやすみみずく。(池田)
'05.12.01(Thu) 02:13:31

シジジィって何か。
まだ、読んでる途中で問いに答えるのはあれなんだけども、きみの問いをみた時、「成熟」のP37のくだり「ぼくのいいたいのは、ぼくがどう感じるかということなんだ」を思い出したよ。このくだりはこの本の象徴にも思えて。世間に伝わるように変換する努力がヴィーナスプラスXより薄く感じるんだなー私はきらいじゃないけど女子高生みたいだ。 (池田)
'05.12.01(Thu) 02:27:47

シジジイじゃない。
いまさらなんだけど今読み終えました。ファミレスで。本当に良質の恋愛小説だったと思う。これはものすごく今の自分にリンクした。いろんな意味で恐ぇ。。書かれている真実もこの上なく残酷だし、個人的にもここでわかっておきたい(わからないままにしておくことがまた恐い)といった感じ。シジジイじゃないはかならず話そう。自分だけでは恐すぎて顔をそむけた答えがでそうなくらいです。あと、こないだ仁くんの「シジジイってなに?」の質問にたいしての答えは的確じゃなかったと思った。読み終えてから答えるべきだった。すまん。池田
'05.12.11(Sun) 01:18:55

クリスマス前だってのに。
ドライブ行くつもりだったんだけど、ケンカしてぶちぎれて途中で降りて歩いて帰ってきちゃったよ。あーあ、予定なし3連休で史上最低のクリスマスを迎えるわ。でもこれで本は読み終えるよ。週明け、対談できるといいんだがあいてる日ってある?なんか悲しすぎてこの更新はできなそうなんだけど絶対読み終えますわ。池田
'05.12.23(Fri) 16:13:19

Re:クリスマス前だってのに。
何というか(笑)、ぜひがんばって本を読み終えてくださいね。僕はもうあの本を読み返してもいないから、なかなか君に返信できなくてね。でも、「シジジイじゃない」を恋愛小説と言うなんて、変わってると思うな・・・あ、そうでもないのか。自分の恋愛もああいうことかもしれない、と思ったんだね。それもすごいけど(笑)。たぶん次は、対談編になるでしょう。僕も読み返しておきます。頭のおかしい人間ふたりが真剣に会話をしたら、どれだけ圧倒的に滑稽であるか、この企画を読んでくれている人たちに示してみせよう。ま、そんな人いないけどね。「現在休止中」に入れられちゃったしね。(仁)
'05.12.23(Fri) 17:11:43

空いている日。
基本的に、27日以外は空いています。でも、平日だと話す時間が足りないかもしれない。僕は会社が29日まであるんだけれど、30日を過ぎると君は、実家に帰ってしまうよね。もっと早い? 29日は会社が大掃除のため夕方までだから、君さえこっちにいるなら、その日がいいかもしれない。徹夜だってできるね。(仁)
'05.12.23(Fri) 17:19:53

Re:空いている日。
昨日はありがとう。おかげで今年も楽しくクリスマスを受け入れられるよ。今朝のんだくれてきみと別れる時、次は対談かぁと思うとでろっとした頭が少しひきしまったような気がして、新たな気持ちに切り替わったんだ。昨日も楽しかったけれど、対談はまた別の楽しみなんだよね。異なる楽しみ方を一人の人とできるのは素敵なことだと思う。素敵といえば、きみは私との対話で「四畳半神話体系」について語り合っていたときが一番官能的だったといっていたけれど、私は堀江敏幸について語り合った時がそれだった。お互い同じ時間を共有しながら
'05.12.24(Sat) 18:43:55

つづき。
官能の度合いが違うことが、私はうれしいんだ。同じ瞬間が一番最高だとお互い感じるよりもね。異なることによりきみは私の想像の範囲を超えて、私もきみの範囲からはみだす。それは継続をもたらし、未来がある感じがするんだ。これは「シジジィじゃない」にもリンクするかもしれないけど。しゃべりすぎた。これからまた友達の家で飲んだくれるよ。では29日ということで!(池田)
'05.12.24(Sat) 18:44:41

先日は、
お誘いしたにも関わらず、途中から昏睡し失礼しました。喜んでもらえてよかった。
ところで、堀江敏幸についてやり取りしたときも確かに官能的だったね。そもそもあのやり取りがこの企画を始めたきっかけだし、さらに言えば僕らが親密になった瞬間ではなかったかな。たぶん、君と、そのとき君が読んでいる本との間に官能が生まれているかどうか、が大きいのかもしれないね(じゃあ僕って何なの、って話はある。知らないけど)。今回の本は君には官能的ではないのでしょう。でも、それでいいんだ。そういう本を読むのもいいもんだし、しんどくても、僕と読めばいいんだからさ。では29日を待っています。(仁)
'05.12.25(Sun) 12:18:13

そんなことは。
ふーッ今日も朝まで飲んだくれて、ようやく年越しモードに突入です。昨日私が言った官能は本のせいではないと思うな。本対自分の中で起こった官能をこんどはきみ対私の時にいかにしたら伝えられるか、きみの反応を受けとめられるか、の運動とその結果に対する喜怒哀楽の際に生まれた官能に対して言ってる。だからきみがいないことには生まれない官能についてだよ。もちろん「四畳半神話体系」の時も私もとても官能的だったと感じた(むしろあの本では私対本の間に官能があまり生まれなかったから、よりきみ対私の間に生まれる官能について
'05.12.25(Sun) 15:48:40

つづき。
は端的だったかもしれない)。そして今読んでいるスタージョンに関しては、私はヴィーナスプラスXの時には起こらなかった官能を感じている。でも今はその官能より、それがきみに伝わっていないことを知り驚いていたりする。この驚きは伝わっていなかったという失恋感と自分の想像の範囲からはみだした新鮮さと、きみにさらに伝えようという行為の際に生まれる、伝わるかもしれない、どんな返信がくるのかという希望、喜び、伝わらないかもしれないという不安、臆病さ。そのすべてをはらんでいて、新たな官能を生む。だから結論としては、
'05.12.25(Sun) 15:49:30

つづき。
きみと本を読む行為は、本が問題ではないと思うってこと。(池田)
'05.12.25(Sun) 15:50:04

三の法則
読み終えましたよ、「三の法則」。前半はSF的な作られ感(きみもそんなことをいっていたような気がする)とうんちくに退屈だったんだけど、後半はよかったから読後感もいいままです。「シジジィじゃない」につづいてやはりこれもSFというより恋愛とかヒューマニズムな感じを受けたな。地球人のそれぞれが最初の自分の想いが成就されない、それによる喪失から、葛藤しながらも脱却して新たな関係、自分を作り乗り越えるっていうさ。きれいにまとまりすぎててふーん感もあったけど、私はこの作者を前より、受け入れられるんじゃないか、友達
'05.12.25(Sun) 17:33:05

つづき。
になれそう感は高くなったな。なんか机上のインテリで現実として失うことを知らないってわけじゃなくて、恋も失恋もしてそれを乗り越えた人な感じがしてさ。(池田)
'05.12.25(Sun) 17:33:53

三の法則。
まず、「三の法則」について書くね。この作品でも明らかなように、スタージョンは一般的な恋愛の持つ一対一の関係に対して懐疑的だと思う(そういう意味では「そして私のおそれはつのる」にも同じモチーフが含まれている)。ところが『ウ゛ィーナス・プラス・X』では、あれだけ人間的な感情を超えた存在を描きながらも、実は、夫婦という一対一の関係を一笑に付すような真似はしていないよね。むしろ異様なほど真剣に考えられている。「三の法則」ができすぎているように感じたのは、その「三」という数字は果たして重要だっただろうか、ということでもあるんだ。何で「三」なんだろう? って人工的な気がして。
'05.12.26(Mon) 01:09:36

続・三の法則。
で、比べること自体がおかしいのかもしれないけれど、同じようにSF的な肌触りが強い『ウ゛ィーナス・プラス・X』の、あの多対多と一対一がスリリングに影響し合う世界の方が、池田さんの言うようなこの作家の体温や情熱(?)を実現できているんじゃないかとは思う。
ただ、そんなようなことも「三の法則」を読むまでは、そして君と話すまではやっぱりわからなかったんだ。『ウ゛ィーナス・プラス・X』を読んだときにうっすら感じてはいたものの、強い実感までには至らなかったこの作家の体温や情熱(?)が、この短編集を読むことで少しずつわかってくる気がする。より親密に。
'05.12.26(Mon) 01:11:09

続続・三の法則。
池田さんは以前このやり取りの中で、「この短篇集は主観的に書かれていると思う」と書いていたよね。あれは「三の法則」についてではなかったけれど、実際言えてると思うよ。『ウ゛ィーナス・プラス・X』ん読んだときにはわからなかったスタージョンの素敵なところが、この短編集を読むことでわかってくる(ような気持ちになれる)から。そしてその素敵さは、実は『ウ゛ィーナス・プラス・X』の中にもたくさんあったものなんだと気づいて、僕はうれしくなった。あれはやっぱりすごい小説だな、って。
'05.12.26(Mon) 01:12:43

官能とかの話。
では次に、君との官能的な対話について書くね。うわ、いきなり「君」呼ばわりしてる。すごいわかりやすい(笑)。あの、さっき君からもらったメールを読んで思ったのは、「なんて官能的な対話なんだろう、これは」ということだった。君とのやり取りは緊張感が増せば増すほど、ますます官能的になるんだ。僕はね、君が、僕の考えもしなかったようなことを話すのを聞くのが大好きなんだ。君が何かの本を読んでその本と官能的な関係を結んだとき、君の話は君の言う「ノロケ」の度合いを増して、色っぽくなる。
'05.12.26(Mon) 01:13:41

続・官能とかの話。
でもそれはあくまで聞く側としての僕の受け取り方であって、確かに対話そのものの官能とはちょっと別かもしれないね。この、ある本についてふたりで語り合うという企画は、何ていうかかなり複雑な関係を僕らの間に発生させるのだと思った。こんな関係、なかなかないよ。改めてそのことがわかったから、君のメールには感謝してる。・・・でも、君に『四畳半神話大系』が全く官能的でなかったとは。いや、よく考えれば確かにあの本は君にとっては使う言葉が異なる他者だし、君はあの本に恋もしていなかったけれどさ。少なくとも、仲のよい同僚に対する好意みたいなものはあったよね。それが新鮮だったのかな、僕には。(仁)
'05.12.26(Mon) 01:18:41

ぐぃっとさ。
一昨日のきみからのメールを読んで、いよいよ今回のブックトラベリングもクライマックスを迎えたんだと感じたよ。毎回本当にいろいろ巻き起こるよね!レスしたいものもあるんだけどそれはまた改めてレスします。連日の飲み会で今日も微酔いだしあんまし読めないかなって思っていたんだけど、「そして私のおそれはつのる」読み終わりました、ぐぃっと、気がついたら。おやすみみずく。(池田)
'05.12.28(Wed) 02:09:56

うーん。
今日は仕事納めで早めに切り上げた後は今日も友達の家で飲み会ー!えへへ。。って最近の年末飲んだくれの日々で(いやこの本は終電後読んでる)たらたらしてたら、上司にすっぽり忘れてた某新誌の企画立案の話で喝られて思い出して、飲み会キャンセルしたものの間に合わず、明日も朝からリサーチだよ。。とほほ。今「墓読み」を読んでるんだけど、頭がなんか切り替わらなくて驚いた。発想する脳回路(レベルがどうあれ)とこの本を読みすすめる脳回路はまったく別なんだってことにさ。読みすすめることによって新しいことを発見していける
'05.12.29(Thu) 01:54:59

つづき。
という点で似てるような気がしたんだけど全然だ。なんなんだろうね、これは。本もあと少しなんだけど、感覚が戻ってから読むよ。恋は同時に二人にできないってことかね。(池田)
'05.12.29(Thu) 01:55:37

ドクハ。
あっ仁くんに先に締められてしまった!こちらも読破。いやあ、ヴィーナスプラスXから含めるとかなりの長旅だったね。でも仁君同様、2冊目を読むことと仁君のメールで今回の本というよりヴィーナスプラスXがかなり判ったのと、違う筋道で考えてたように思えたりしました。今の本を読んでとてもよかった。私たちの本をめぐるイカれたメールを今読んでいてくださった方(いるのかな?)のちほどお目にかかる方々、どうもありがとう。内沼くん川上くん、途切れてごめんなさいでした(まだ秘密にしてるけど)。池田
'05.12.29(Thu) 15:35:16

Re:つづき。
しまった!池田さん個人宛にさっきのメールを送ってしまった。つくづくダメだな。今朝の僕のメール、再送します。
======
同時に二人に恋できないというのは、本当に同時にはそうかもしれないって気もするね。
ともあれ、いよいよ今年も終わり。この企画の今回も、今日の対談編でひとまず終わりだ。もしこの企画の更新を見てくれていた人がいらしたら、しばらくは対談編をお待ちください。これまで読んで下さってありがとうございました。あとウチヌマ編集長、勝手に再開してすいませんでした。でも対談編の文字起こしが終わるまでは、このままあなたには黙っていようと思います。では池田さん、今日はよろしく! 17時に新宿、かな。また連絡します。(仁)
'05.12.29(Thu) 15:40:31


第1回対談 (新宿の某喫茶店にて)
シオドア:スタージョン
『海を失った男』
(訳:若島正 晶文社)


 
(1)『海を失った男』は読んでよかった! (『ヴィーナス・プラスX』と『海を失った男』について)
(2)フリークス的な『失楽園』でうっとり (「ビアンカの手」について)


池:今日の対談編の準備で、今までやり取りしたメールを全部まとめてたときにさ、最初の『ヴィーナス・プラスX』を読んでたときのメールを読み返したんだけど、何ていうか……。
仁:とまどってるよね。
池:そうそう、アンテナを張ろうとしてるんだけど、アンテナが常にブレがあるなっていう感じが。
仁:あるよね。で、どうでもいいところにこだわってみたりね。すごいぶきっちょだよね。
池:今読むと、ああー、何やってんだ、みたいな。メトロノーム並みに揺れてる。

仁:メトロノームっていうのがうまい比喩なのかはわからないけど(笑)。
池:(笑)。でもその必死さはちょっと偉いかも、って思ったよ。
仁:必死だったよね。実際。


(1)『海を失った男』は読んでよかった! (『ヴィーナス・プラスX』と『海を失った男』について)
池:本当に、この本(『海を失った男』)を読むとあの『ヴィーナス・プラスX』がいかに難解だったかっていうか、これを読んでからあの本を読むと……。前回、『ヴィーナス・プラスX』を読んだ後に対談編をやったとき話したことって、かなり的を射てなかったなって思う部分があって。(※この対談編は結局、テープ起こしされませんでした)
仁:うん、そう思う一方で、やっぱりそれなりにわかってたんじゃないかって気もしたんだけど(笑)。
池:嘘ぉ。何かね、前回『ヴィーナス・プラスX』を読んだときには、これはSFなんだっていう頭はすごいあったんだけど、今回の本(『海を失った男』)を読んだ後に、結局はあの『ヴィーナス・プラスX』もかなり壮大な形に見えるようであっても、実際の仕方が本当に、どこにでもある人間関係からしか発生していなかったんだなっていうことを本当に思った。『ヴィーナス・プラスX』を読んでいたときは、もっと人類全体的な話、人類全体に当てはまる構造みたいなものを、この人は俯瞰的に見てるのかなって思ったんだけど……。この人結局、隣にいる、体温が伝わるくらいの距離の人と、すれ違ったり近づいたりっていうことによって、考えてるっていうか……。
仁:あ、全然そうだと思う。見知らぬ人のことはあんま考えない人じゃないかな。自分と関係のある人のことを考える人だと思う。
池:そうそうそう。それは最初から思ってた?
仁:基本はそうだと思ってた。
池:おー。嘘ぉ。(『ヴィーナス・プラスX』の)最後の終わり方がさ、全人類に向けた、みたいな感じじゃなかった?
仁:確かにそうだけど、そういう意味では全人類的な問題として考えようとする傾向はこの本にもあると思うよ。だってたとえば「成熟」というテーマを設定して、タイトルもまさにそうつけちゃうとかさ。あと、「シジジイじゃない」で「シジジイ」っていう概念を出してくるところとかもそうだし、それこそ「三の法則」とかね。だから、自分と関係ある人のことしかたぶん考えてないと思うけど、そこから何かしらの概念を引っぱり出そうとするみたいな、そういう風にしてものを考えるっていうやり方なんだと思う。『ヴィーナス・プラスX』もそうだったと思うし。
池:そこまでわかってやっと共感できたって感じかな。
仁:けっこうこの人、しつこくそれをやり続けるよね。この本読んで、うーんこれはしつこいなって思ったんだけど(笑)。
池:うん、丁寧だよね。ちゃんと答えまでくれるよね、この人。
仁:何か答えみたいなことも一応書いてあるよね。ただ、毎回毎回、作品ごとに、そのときそのときの回答を出していくって感じがした。問題視してることは同じなんだけど、時期によってどんどん考え方は変わっていくし。この短編ではこの問題についてこう言っていたけど、別の短編では同じ問題についてちょっと別の答え方をしてる、みたいな。そういう印象がある。
池:そう? 
仁:うん。だから『ヴィーナス・プラスX』って……あれ、時期的に言うとどうなんだろうね? 『ヴィーナス・プラスX』って何年の作品だっけ? 1960年代だよね?(※正しくは1960年です。) えーと……だから、この本に入ってる短編より後なんでしょう。

池:ああー。まあ、後っぽいよねえ。後だろうねえ。
仁:(あとがきを見て確認しながら)うん、やっぱりそうだな。この流れってすごいしっくりくる気がした。
池:うんうんうん。そうだね。でも、私はやっぱり『ヴィーナス・プラスX』みたいな長編よりもこっちの方が好きだな。この本に入ってる個々の短編で、あれに勝るものはもちろんないと思うけど、点在してるものっていうのが、ひとつで書ききるよりも私は好きなんだろうな。
仁:こういう風に点在している方がドキュメンタリー感は出るよね。
池:うん。作者のドキュメンタリーってことでしょ?
仁:そうそう、本人の。ドキュメンタリー感はけっこう、この人の作品を読むときに大事なところだと思う。いわゆるSF作家としてはあまりいいことじゃないのかもしれないけど。
池:そうだね。それが『ヴィーナス・プラスX』よりもわかったなあ、今回で。この本はSFっていう感じはほとんどなかったね。
仁:「成熟」って作品も、変な現代アメリカの、今のハリウッドの映画みたいじゃん。プロットとか描写の感じとか。
池:「成熟」でも、主人公の話してることが、やっぱり私は『ヴィーナス・プラスX』の主人公が話してることよりも、ずっと登場人物本人の実感が入ってるなあ、って感じがしたんだよね。『ヴィーナス・プラスX』だと中の人物がひとり歩きしてないっていうか、その言葉を言わせてるのは作者でしょう、みたいな感じがして。「成熟」は特に、会話がすごいと思ったの。
仁:ああ、そうだね。意外と色気のある会話が書ける人なんだな、って思った。
池:そうそう。何だろう、人物の浮き沈みが生々しいっていうか。作者もこういう人なのかな、って思ったり。
仁:そういうところもあるんじゃない? 自分の息子に、「成熟」の主人公と同じ「ロビン」って名前をつけたらしいし。こんな主人公と同じ名前をつけられてどんな気分だろうって思うんだけど(笑)。
池:あ、そうなんだ。
仁:うん。あとがきも読もうよ。
池:読んでない(笑)。この本の文章は、(作者ではなく)登場人物本人の独白? って思うくらいのときがあった。
仁:『ヴィーナス・プラスX』でも「現代アメリカの日常」パートはそれなりに色気のある会話もあったと思うけど。
池:ああー、そうだね。でも何か、入りこめなかったな。この本は社会批判的な視点があまりないよね。社会的に自分がどういう立場をとるっていう意志表示があんまりないから。……最後の「海を失った男」とかにはある気がしたけど。
仁:うーん。でも、立場っていうか意志表示はあるといえばあるような気がするけど。
池:あるかあ。
仁:うん。全部とまでは言わないけど、あるし、ずっと同じと言えば同じことについて書いてる気もする。
池:同じだけど、モチーフにしているものが、同じように見えて、たとえば「シジジイじゃない」と「三の法則」も、同じように見えて、違うよね。それが面白いなあ、って思った。
仁:モチーフとしては、欲望というものをどういう風に持ちうるか、ってことと、持ってしまった欲望をどう実現するかっていうこと。そういうことをずっと考え続けてるって感じがする。『ヴィーナス・プラスX』も含めて。『海を失った男』の「ビアンカの手」とか、かなりそうでしょ? これ、すごい欲望が。
池:フェチだよね、これ。わかるよね、何か。
仁:いやあ、わかんない。
池:あ、そう?
仁:ここまではねえ……。いや、わかるっちゃわかるよ。僕だって、前にも話した会社の女の先輩は言うほど好きじゃないけど、先輩の尻は見てて好きだし。
池:たとえばこの人のこういう表情が好き、とかも、本当はもっと優れたものが周りに他にあるよって言われたとしても、いやこっちがいい、みたいな(笑)。その執着心?
仁:やっぱこの尻は、とか思うもんなあ。
池:鼻血出そうになる、みたいなさあ。


(2)フリークス的な『失楽園』でうっとり (「ビアンカの手」について)
池:これって終わり方としては『失楽園』(※もちろん渡辺淳一の方)的な、いちばんハッピーな終わり方だなって思ったんだけど。
仁:えーっ!? そう……そうやって読むんだこれ。俺これ、終わり方が全然わからなくって。
池:『失楽園』(※もちろん渡辺淳一の方)って思う人がどれだけいるかはわからないけど。執着の果て、っていうか。何でもいいんだけど、たとえば、先輩のお尻が好きだったら……。
仁:「先輩のお尻」って言われると何か嫌だ(笑)。先輩のお尻が好き、って何か生々しいよ。この場合は「先輩の尻」だな。
池:そう。でも他にも好きなものがあったりとかするけど……。
仁:それは、俺だってもちろんそうだよ。
池:そっちじゃないわけじゃん、この主人公にとっては。執着が病的になっていって、それで全てになってしまえばいいってことでしょ。自分の全てに。それでああいう結末になれるっていうのは、この主人公にとっては本当に喜びだと思うよね。
仁:……何で?
池:妄想の世界でしか普通はありえないことなのに、それが実現できちゃったっていうのが幸福でしょ。
仁:そうか。この結末がいいのか……。
池:うん、もしこの結末にならなかったら、この主人公はすごい後悔したと思うもん。で、また「あのとき、ああなっていればなあ」ってことをしつこく、何回も何回も考えるんだよ。
仁:君にもこの主人公みたいな感覚がある?
池:それは私にもいろいろ、欲望はあるから。このウェット感はすごいわかる。
仁:あ、この気持ち悪いウェット感は俺にもわかる。でもあの結末が幸福だっていうのは思わなかったな。自分の執着の対象物で自分の全てが満たされる究極の至福、ってこと?
池:私はそう思ったな。ああ、これなら幸せじゃないかな、って。だって不幸感なくない?
仁:不幸感、ない! 確かに。そういう意味では不気味なほどの幸福感だね。
池:物語だからね。現実は違うかもしれないけど。
仁:そうなんだろうね。でもこれ、ちょっと話がずれるかもしれないけど、ビアンカの手とビアンカとビアンカの母親の関係ってけっこう複雑じゃない? 単純にビアンカの手だけの問題ならともかく、ビアンカの母親の手も出てくるっていうのが。

池:ああー。でも、主人公がビアンカの母親に対してそういう感情があるとは思えなかったんだよね。
仁:うん、ないでしょ。ビアンカの母親に対してもないし、ビアンカに対してすらないでしょ。ただビアンカの手に執着してるっていうだけで。
池:やっぱり崇高なものとしてビアンカの手だけがあるよね。
仁:うん。でも、この結末で母親の手の問題が出てくるのは、現実的に母親の気持ちを考えればよくわかるよね。だから、わりと普通の人間(ビアンカの母親)のまっとうな感受性、嫉妬とかさ、そういうものもちゃんと小説に入ってるんだな、って思った。主人公の執着があんなに異常なのに、一応、まっとうな人物であるビアンカの母親との関係を無視しないでちゃんと書くのは立派だと思う。つまり社会性があるってことだと思うんだけど。
池:うーん、でも、私はそういう意味では母親の手は関係しないでほしかったなあ。ビアンカの手の話であってほしかった。

仁:あ、でも実際、そういう関係だよね。少なくとも主人公にとってはそうでしょ。ただ最後の方になるとビアンカの手でもビアンカの母親の手でも、どっちでもあまり変わらないみたいな、何かよくわからないことになってて……。それくらい欲望っていうのは一方的で、自分勝手なものなんだろうけど。
池:この時代にそれを書いてるっていうのがすごいよね。今、ストーカーとかいっぱいいるもんね。
仁:でも作者はこの後、こういう異常な欲望を中心に置いた話をあまり書かなくなったんじゃないかって気がする。少なくともこの短編集と、『ヴィーナス・プラスX』には(「ビアンカの手」に似た作品は)他にないよね。この「ビアンカの手」はスタージョンの初期の代表作、って言われてるんだけど、こういう、欲望のあり方っていうのをすごい考えるところからスタートしたってことなのかな。
池:いちばんわかりやすい。
仁:俺、この作品については全然わかんなかったな。でも、けっこうこれがスタートって考えるといろいろ、他の作品の読み方も変わってくる気がする。
池:いや、私だってわかってはなかったよ。
仁:俺、『失楽園』(※もちろん渡辺淳一の方)のよさなんて全然、わからないもん。
池:昼ドラとか?
仁:昼ドラ。わからないなあ。
池:昼ドラってさ、あまり相手のどこに胸キュンしてるかとか、よくわからないよね。この人のここが好き、とかもあまり出てこないし。ただひと目で恋に落ちたとか、運命の出会いとか、そういう設定が多くて。
仁:うーん。じゃあみんな、そんな、どこに胸キュンしてるかもわからないままひたすらドロドロするみたいな、そういう不条理な人生を平然と受け入れているんだ? 恐ろしいね。昼ドラって、あれ見てる人は共感してたりするんでしょ? すごいよね。
池:運命とかひと目で恋に落ちるっていうのも、結局は周りから「ロミオとジュリエット」的な環境にされていって成立するとか、いろいろあるしさ。いろいろだよ。
仁:「運命」……「呪い」って感じだな。
池:変わらないじゃん(笑)。
仁:あ、でも『トリスタン・イズー物語』とか、今残ってる昔の民話にもそういう話ってけっこうあるよね。やっぱりそういう方がスタンダードに共感しやすいのかな?
池:しやすいんじゃない?
仁:だけど、ここ(「ビアンカの手」)で描かれている欲望が、そういう昼ドラ的なものでもなくて、相当フリークス的なものであるってところは信頼できる気がするな。昼ドラとか、不条理でドロドロしてるくせに、案外ピュアな気持ちとかにこだわってたりするじゃん。欲望って基本は変態的なものでしょ。そうやって不条理でドロドロした世の中をさり気に受け入れやすく作り変えてる、って気がするね。いや、そんな観てないけど。
池:でもそれが昼ドラのいいところでしょ。大恋愛に憧れたりとか、『赤毛のアン』的な気持ちって私にもあるし。
仁:スタージョンには「俺の欲望は、お前らの欲望とは違う!」くらいの気持ちはあったんじゃないかなあ。
池:それがね、私、そうでもないのかなって、「シジジイじゃない」を読んだとき思ったの。

(次回へつづく)