第3回  小島弘光さん(spore
「作家が有名かどうかではなくて、
今発表する価値があるんだというところまで持っていきたいです。」
spore Vol.320041050(新品)

ロバート・ハリス×高橋宏文/板谷由夏/spangle call lilli line/フレデリック・ボワレ/穂村弘×神田サオリ/後藤繁雄/獅子倉シンジ/片山芳彦/川井俊夫他。
買い方



連載企画『一点突破』第3回は、「Words&Visual」をテーマとするインディーズマガジン[spore]編集長の小島弘光さん。インディーズとは思えないクオリティの高さで、BEAMSなどでも取り扱われているこの雑誌。ブックピック内沼が学生時代からお世話になっていることもあり、ついに実現したこのインタビュー、実は昨年秋、3号発売のすこし後に行われたもの(こちらの不手際で掲載がとても遅れてしまいました。関係者の方々にはこの場を借りてお詫び申し上げます)。現在は4号が着々と出来上がってきているそうで、そちらも期待大です。ともあれ、このクオリティの高さの秘密は何なのか?


-----毎号、クオリティ上がっていきますね。本当に、びっくりします。

ありがとうございます。

-----次号ではどんな企画を立てようと?

次は「恋愛」をテーマに制作をスタートさせています。spore「恋愛」特集(笑)、ということで面白い本になるんじゃないでしょうか。「恋愛」というモチーフはもはや消費し尽くされている感がありますけど、より生々しい方法でsporeなりのアプローチの方法があるんじゃないか、ということで企画を立てました。そうすることによって、もう一度僕らにとって、「恋愛」という言葉に対して誠実に向き合えるんじゃないか、と。もともとsporeはストーリー主義ですし、一つの本として完成度が見込めるのではと考えています。

-----毎回大きな括りがあって、それについて作家に書いてもらう、という感じなんですか?

ジャンルの違う分野を一つにまとめる時には、コンセプトが重要なんです。コンセプトを通して、編集していかないと、いろんなジャンルがまとまらないから。編集側からがっちりつめて、読者はモードとして何となく分かってくれる感じですね。作家たちの潜在的な共通意識が現れて、それが読者に残ればいいなと思っています。コンセプトは今の時代で、自分達が必然的に提示してかなければいけないという意識がある。インディーズだし。だから、生真面目さというものがすごくあります。その点が一番気合いを入れている。

-----最初集まった時に、文章書きたい人、写真を撮りたい人がいて・・・という?

そうです。それを一つにしていく作業。やっていくうちに、スポア的にすごくいいことじゃないかなって思いはじめたのが2号からで、1号はできちゃったという感じ。ノンジャンルのコンテンツをどうやって伝えたらいいかと意識しはじめた。それを整理しはじめたのが3号から。始めは12〜13人。今は30人くらいですかね。今は執筆者紹介は両面でぎっしりだけど、最初は片面だけだった。

-----始めたきっかけは?なんで雑誌を作ろうと思ったのですか?

いろんなことがありました。自分は文章を書いてみたかった。自分にとっていい媒体ってないかな?と探しているうちに。周りにものを作る人が多かったから、自分たちから発信していければいいなあと思って。インディーでやっていくのは、大変だけど当たり前のこと、という感覚だったので、それはやってみないといけないだろう、それが重要という感じで始めました。僕はスーパースクール出身なんですが、実験小説がすきで、自分で書いて後藤さんに見せてましたが、後藤さんにこき下ろされていた(笑)。そのとき感じた悔しい気持ちがモチベーションです。[super](※1)に触れたのも大きかったです。自分たちの下の世代が自由な考え方でやっている雑誌に刺激されました。コンセプトが良かったから、自分もスポアを作るに当って刺激的に感じました。

-----小島さんに小説を依頼したんですけど、結局その雑誌は完成しなかったんですよね。まだ僕は学生で、責任感もなくて。本当に、あの時はすみませんでした。

映画を10本批評して、その10本をサンプリングして、そこから小説を作っていくというやつだったよね。両方やりましょうということで、鬼だと思った(笑)。

-----すみません。でもあれは、めちゃくちゃ凄かったですよ。あの時は[super]という団体そのものが行き詰ってしまって、とりあえずイベントとか、すぐに結果が見える方にシフトしていっちゃったんですが、今もいずれは作りたいと思っています。

いつもこうしたいな、というイメージを持つことが重要だと思います。スポアもそういったイメージを大切にしてこれからも発展できればと思います。

----スポアを立ち上げようとなった時に声をかけたのは?

一番はじめにlittle fishさん(元スクール生)にお願いしました。編集に関しては、基本的にスクールの人。編集に関しては、スーパースクール(※2)のロジックが働いていると思います。little fishさんは漫画を書き続けてる人で、その後富田英三に声をかけて、早稲田文芸部の写真撮ってる人とかを知っていたので、彼経由で作家が集まっていきました。また、インターネットでテキストサイトをやっている人にアポを取ることもし始めましたね。それぞれのスタイルで人を集めていきました。
デザインは7・8割は英三くんが仕上げていったんだけど、笠巻さん(スーパースクール生)も加わって、奇跡的に出来上がりました。徹夜も厭わない感じで、純粋にものを作れる情熱がすべてを突き動かしていました。

----まずスポアが凄いと思うのは、みんな忙しいお仕事をされている方ばかりだということです。これだけのものをつくられるのは、大変なパワーが必要だと思うのですが。

メンバー自体が仲がいいっていうのがあります。付き合いも5年6年で長くて。それぞれ仕事はハードだけど、いつもスポアのことを考えている感じです。

----こういう雑誌を作りたいというモチベーションは?自分がまず作り手で、そこから外に出していきたいという過程があったんですか?

スクールのころは、文章を書くということに比重を置いてたワークショップだったんですよ。だから編集に興味はなかった。ところがやっていくうちに、だんだんキャラ的にそういう風になってしまったんです。これだけ人が増えると編集せざるを得ない状況に追い込まれて。
クオリティはあげていきたいなと思っています。コンセプトやスタイルが後戻りしないように。作家が有名かどうかではなくて、今発表する価値があるんだというところまで持っていきたいです。

----これから作ろうとしている人たちに対して、編集するという意識とかアドバイスはありますか?

周りの人を大切にして下さい。いかにいいチームを作っていくかが重要。一人ではできないから。なかなか信頼関係ってできないじゃないですか?でも一度作ると、苦楽を共にするからいいチームが生まれる。いかにチームにとって、スポアをよくするためのいい営業スタイル、いい作家という流れになっていくんです。それが一番重要。

----雑誌を作るのに必要な役割分担は?

作ると問題に直面していくので、それに対して一番の適任者というものを分担していく。コンテンツを作る人、デザインする人。作った後どうするかとか。そうするとやっぱり営業する人が必要ですよね。

----印刷所はどうやって見つけたんですか?

オンラインで探しました。ネットで見積もりできる、安いところを愛媛に見つけて、1号は愛媛。だけど、印刷のクオリティがあまり良くなかったんです。だから2号以降はツテで見つけた。クオリティも高くて、値段もいい。知り合いの知り合いなんですけど。

----そして営業、となるわけですが、最初はどうしたのですか?

リブロの青山店に行った。店長にアポを取って、蜂屋と二人で営業しにいって、プレゼンして。はじめは直接ですね。アート系のインディー雑誌を置いてくれそうなところにしぼって、とにかく電話して。2号から地方小にも本を持っていった。

----地方小って、出版社じゃなくても大丈夫なんですね。

ブックファーストやパルコブックセンターも、地方小があったから知らないうちに店頭に並んでいました。

----本屋さんに並んでいるのを見た時って、どうでしたか?

初めはすごい嬉しかったですね。パルコブックセンターに置いてもらったときは特に。その辺意味もなくうろついちゃったりして(笑)。二度とないという体験。良かったとは思うけど。1号が本屋に並んでいるという光景はカルチャーショックでしたね。

----部数は今回どのくらいなんですか?

3000。1号は1000。今までの号は結構はけました。献本も入れてですけど、メディアにも配ったから。でも部数は5000くらいにしたいですね。

----4号で増やす予定は?

広告営業次第ですね。お金を出してもらうだけじゃなくて、ギブアンドテイクの関係を築きたいです。

----あまり大きなところにガンガン当たって、というのではないということですよね。

雑誌の性格上。売っていただいているBEAMSさんの広告も入っています。ただお金を貰えるということですめばいいけど、制限が出ちゃったら、自分たちのものを作っている意味がなくなっちゃうから、そこはバランス取るのが難しいです。

----失礼ですが、利益は出ていますか?

印刷費はプラスが出ています。営業をちゃんと入れているからというのはありますね。二人入ったからもう少し楽になると思います。

----たしかに、きちんと営業専門の人がいるインディー雑誌というのはなかなかないのかもしれませんね。やっていて、ここが肝だなっていうことはありますか?

スケジュール管理(笑)一番大変。みんな仕事してる分押していったりしますね。プライベートもあるし。本当はもっと短いスパンで出していきたいんだけど。

----スポアをこういう風にしていきたいという、一番の目標は?

ちゃんと今の時代の中で、必然性のあるものを提供できる媒体になりたいということですね。今の時代に向き合って人に何かを伝える、ということに、そしてその精度を上げていきたいと思いますね。クオリティアップしていきたい。方向性は定まってきています。

----スポアは、作品という印象が強いんですよね。ずっと作品であって欲しいです。

ああ。作品主義とコンセプト主義ですね。アルバムっぽいイメージですね。スポアっていうバンドのアルバム。サードアルバム、みたいな。そういうのって3枚目がちょっとね、とかあるじゃないですか。継続していくのは大変だけど、楽しんでやっていきたいですね。

----ところで、今までなかったインタビュー記事が、今回から3本入っているのは何でですか?

文章と小説に偏り過ぎてるなあと思って、強すぎて相殺されてしまう感じがして。インタビューありエッセイあり、という方が、フィクションの価値が高まるなと思って。同じ文章でもリズムを作れるかなあ、と。コンセプトを説明するための代弁者として、今回は巻頭に入れました。読者により伝わりやすいのかな。あと、書店へのアピールの意味もあります。楽しかったから、継続してやっていきたいですね。今回はまず、ロバート・ハリスさんをやりたいという話があって。コンセプトとピッタリ合ったんです。あとは音楽、俳優を入れるとバランスが取れるなあと思って。音楽はHMVやタワレコに置きたい、っていうのもありますよね(笑)。自分達が動きにくくならない範囲で、やっていくことが大切だと思います。そういえば、背表紙は男のヌードなんですよ。

----ああっ!いつか『ドラゴンボール』の単行本みたいに、背中が揃うわけですね(笑)。じゃあ次は冬休みに会えるということで。どうもありがとうございました。

※1 super
ブックピック店長・内沼が学生時代に作ろうとしていた雑誌と、それを制作するチーム。原稿を集めたりも結構したものの結局諸事情で発刊できないまま、活動はそのまま雑誌制作以外へとシフトしていった。ブックピックのドメイン「super-jp」もそれに由来し、現在もゆるやかに続いている。

※2 スーパースクール
編集者・後藤繁雄が主宰するスクール。半年で一期となっており、時期は違うがsporeの小島さんもブックピック内沼も受講していた。今も続いており、2005年4月現在11期を迎えている。http://www.gotonewdirect.com/superschool/

(聞き手:内沼晋太郎/構成:Bonne、江西結名)

spore Vol.320041050(新品)買い方